2018年9月23日(日)

春秋

2018/6/12 1:15
保存
共有
印刷
その他

 「死刑事件はもとより、そうでなくとも、仮に無罪であるにもかかわらず有罪判決が確定してしまうようなことがあれば、(中略)社会的に死んだと同様の結果をもたらさないとも限らない」。かつて最高裁判事を務めた元大学教授が著した「最高裁回想録」の一節だ。

▼死刑事件ではないが、この元判事は「東電OL殺人事件」で無実を訴えたネパール人男性の上告を棄却。無期懲役の判決が確定した。メディアでも大きく報道された著名事件だ。が、回想録の出版後、DNA型鑑定の新証拠により再審開始が決定。被告人は無罪が確定し、古里へ帰国した。裁判官とは、難しい職業である。

▼1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件。死刑が確定した袴田巌さん(82)の第2次再審請求で東京高裁はきのう、再審開始を認めた静岡地裁の決定を取り消した。警察による証拠ねつ造の疑いに言及し「無罪」の心証を固めた地裁判断が覆された。DNA型鑑定の信用性などについて地裁、高裁で判断が割れた。

▼裁判所の事実認定は常に正しいのか。そんな葛藤から死刑廃止を唱えた元最高裁判事、団藤重光さんを取材したことがある。司法への信頼を根底で支えるのは神ならぬ人が人を裁くことへの苦悩かもしれぬ、と感じた。高裁は死刑と拘置の執行を停止した地裁決定は支持。袴田さんは再収監されない。苦悩の一端だろうか。

秋割実施中!日経Wプランが12月末までお得!

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報