2018年6月19日(火)

自由と民主の旗を振るG7がなくては

社説
2018/6/12付
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 自由経済や民主主義の旗を振り、世界を主導してきた主要7カ国(G7)が分裂の危機に立たされた。国際社会の統治に空白をもたらす深刻な事態である。

 カナダで8~9日に開いたG7首脳会議(シャルルボワ・サミット)は、かつてないほど紛糾した。過激な保護貿易に突き進む米国と、その撤回を迫る欧州やカナダとの亀裂が深まった。

 トランプ米大統領は遅刻や早退も気にせず、苦心の末にまとめた首脳宣言すら承認しないと言い放った。G7をないがしろにする看過できない行為だ。

 同じ価値観を共有するG7は、世界の安定に欠かせない存在だった。新興国の台頭で影響力が低下しているとはいえ、日米欧が結束して国際社会の合意形成を主導する意義は大きい。

 G7の分裂は金融危機やテロといった国際課題への対応力を鈍らせ、強権的な指導者の下で既存の秩序に挑む中国やロシアにつけ入る隙を与える。それは米国の国益にも反するのではないか。

 何より重要なのは米国の軌道修正だ。保護貿易や移民制限をはじめとする内向きな政策を自制し、同盟国や友好国、国際機関との関係を正常化してほしい。

 G7が機能不全に陥った直接の要因は、米国が強行した鉄鋼とアルミニウムの輸入制限である。トランプ政権はこれを直ちに撤回し、主要国との貿易戦争を回避しなければならない。

 日本や欧州、カナダは、G7の重要性を米国に粘り強く訴えるべきだ。環太平洋経済連携協定(TPP)、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」、イランの核合意を米国抜きでも維持し、世界の安定に貢献する必要がある。

 トランプ氏は2014年のクリミア併合で排除されたロシアをG7に加えるよう求め、欧州の反発を招いた。問題の多いロシアを呼び戻す理由はなかろう。

 中国やロシアを含む8カ国は9~10日、中国の青島で上海協力機構(SCO)の首脳会議を開いた。G7のお株を奪うかのような結束ぶりを誇示し、保護貿易の広がりに一致して抵抗する方針などを確認したという。

 中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領が、自由貿易の旗手であるかのように振る舞うのは皮肉だ。G7がこのまま漂流し、統制国家の集合体に取って代わられるのでは困る。

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