2018年9月19日(水)

県単位の診療報酬は大いに試す価値あり

2018/6/8 1:09
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 健康保険が利く医療サービスの公定価格である診療報酬は原則、全国一律だ。これに対し奈良県が独自の診療報酬を自ら決めたいと政府に提案している。

 医療の値段に大きな地域差が出るのは望ましくなかろう。他方、国民健康保険の運営主体が市区町村から都道府県に移り、医療費の抑制に県当局が関わりを深めるのは当然である。その利点・欠点を探るためにも県単位の診療報酬を試す価値は大いにある。

 診療報酬は主に医療界の人件費に充当する本体と薬の値段である薬価に大別できる。本体改定率は2年に1度、国の予算編成時に厚生労働、財務両相の閣僚折衝を経て政権が決める。2018年度は0.55%のプラス改定だった。

 改定率に応じ厚労省は一つひとつの医療行為に値づけする。たとえば基本項目のひとつ初診料は、一般患者が通常の診察時間にかかった場合は282点、深夜だと762点だ。1点の単価が10円なので深夜に病院に駆け込んだときの初診料は7620円になる。

 奈良県はこの単価を県の判断でたとえば9円90銭に下げ、県内の医療機関に適用するよう求めた。この場合、県全体の医療費は全国水準より1%下がる計算になる。

 診療報酬を議論する審議会、中央社会保険医療協議会を所管する厚労省は否定的だ。引き下げがほかの都道府県に広がり医療政策への同省のグリップが弱まるのを心配してのことだろうか。日本医師会も認められないという姿勢だ。

 高齢者医療確保法には、医療費抑制のため必要なときは地域の実情をふまえて合理的な範囲で、ある県について他県と違う診療報酬を厚労相が決められるという趣旨の規定がある。地方主権の観点からも、この規定を尊重すべきだ。

 その前提条件として、住民の保険料負担を軽くするため一般会計から公費を拠出する法定外繰り入れの解消や市町村ごとに差がある国民健保保険料の県内統一が課題になろう。これらによって医療費の負担・受益の関係をはっきりさせることが、まず必要である。

 そうすれば医療費が膨らみそうなときに住民が払う保険料を増やすか診療報酬単価を下げるか、県が住民に選択を問いやすくなる。医療費への患者の関心も強まる。

 これはいわば社会実験である。医療費の動きや隣接府県におよぼす影響を探るためにも、実現を後押しする責務が厚労省にある。

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