臨機応変な「新」人事評価
新風シリコンバレー (ロッシェル・カップ氏)
シリコンバレーの企業のビジネスアプローチの特徴は今までのやり方にこだわらず、どんどん改善を進めていくことにある。それは技術やビジネスモデルだけではなく、組織のプロセスや人事管理にも言えることだ。

アドビシステムズ、ユーデミー、ジュニパーシステムズなど多くのシリコンバレーの企業は最近、従来の年1回の勤務評定プロセス(従業員評価表記入後、それを基に面接で従業員にフィードバックするやり方)を捨て、「継続的パフォーマンスマネジメント」に切り替えている。
それを導入した企業によると、上司と部下の間でのより効果的な会話が促進され、部下のモチベーションと定着率が上がっているそうだ。
従来の年1回の勤務評定プロセスは何十年も前から米国の企業で取り入れられてきた方法だが、弱点が多く存在する。このプロセスではマネジャーが多くの時間をとられ、また記入作業も面倒。さらに年に1回だけなので、早く変化している現在のビジネス環境に適していない。
そして数字による評価はトップのスコアをもらえていない従業員のモチベーションを下げてしまう恐れがある。その人の「過去」に重点が置かれ、「将来」を十分に見据えていない方法だとも言える。調査によると、勤務評定プロセスはマネジャーが解雇の次に最も嫌う活動なのだそうだ。
このような反応を受け、シリコンバレーの企業はその代わりとして上司がより頻繁に部下にフィードバックを提供する仕組みを導入し始めている。頻度は企業によって週に1回、月に1回、四半期に1回と様々だが、より頻繁にフィードバックのための会話の機会を構築しているのが特徴だ。
そうすることで従業員が好まないことにも早く応えられ、従業員の人材開発に重点を置いてビジネスニーズの早い変化にも対応できる。こういった新しいやり方を説明する形容詞に「on-the-fly(臨機応変)」がよく使われている。
この新しいシステムをサポートするためのソフトウエアツールがシリコンバレーにはすでに存在している。これによってマネジャーは部下の目標に対する進歩を確認でき、また部下からの意見を受けてフィードバックを頻繁に提供できる。使いやすさもこのツールの特徴であり、情報の共有を推進している。
こういったシステムを導入する会社は、上司のコーチングスキルを高めるための教育も提供している。それがなければ、どんなに良いソフトでも効果が薄いという判断があるからだ。
継続的パフォーマンスマネジメントを導入したサンノゼに本社を持つソフト会社、ザクトリーの従業員は「従来と今のやり方の最も大きな違いは透明性です。今は利点に結びつく明確な達成可能な目標を持っています」と言う。このように、従業員の仕事に明確さを与えることによって、新しい評価の仕方はシリコンバレー企業のさらなる発展を推進すると期待できる。
[日経産業新聞2018年6月5日付]