2018年10月18日(木)

大型研究事業の運用を見直せ

2018/6/4 0:00
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内閣府が進める大型の研究開発プロジェクトで、研究統括者の人選をめぐり不透明な運営実態が明らかになった。安倍政権が科学技術振興の目玉に掲げる事業だけに、看過できない。いまの進め方で成果を出せるのか。事業全体を点検し運用を見直すべきだ。

問題になっているのは「戦略的イノベーション創造プログラム」という事業だ。5年間に1500億円を投じ、車の自動走行や資源探査などで新産業の芽になる成果を生むことを目指している。

内閣府は今年度に始まる第2期12テーマについて、課題ごとに統括役の「プログラムディレクター(PD)」を公募した。だが4月に内定した11人のうち10人は文部科学省など関係省庁が内閣府の依頼で推薦した研究者で、大半が無競争だった。政府の審議会委員などを歴任した大物学者が多い。

PDは研究計画づくりや企業への成果の橋渡しなどで強い権限を握る。そのポストを各省庁の推薦者が占めたのでは、研究全体が省庁の思惑に左右されかねず、公平さや透明さを欠く。新しい発想が生まれるかも、疑問だ。

選考結果について内閣府は「補正予算がついたので第2期の開始が1年前倒しになり、公募の時間が限られた」と釈明している。

人選をやり直したとしても、応募者が他にいないのでは問題の解決にならない。PD主体の事業の進め方を見直し、第2期の途中からでも改めるべきだ。

米国を参考にしたPD制度自体は研究者のリーダーシップを期待でき、利点はある。だが日本には大型研究をマネジメントした経験をもつ人材が乏しい。事業を進めながら人材を育て、成果の評価や産業界への移転はもっと組織的に取り組む仕組みが要る。

この事業に限らず、国の大型研究の多くが補正予算頼みであることも問題だ。イノベーションは息の長い研究から生まれることが多い。当初予算を持続的に充てるなり、基金方式にするなどして、研究予算を着実に確保すべきだ。

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