2018年10月20日(土)

定年後の雇用確保を考慮した最高裁判決

2018/6/4 0:00
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定年後の賃金を減額して企業が雇用を確保している現実に沿った判断といえる。定年後に再雇用されて同じ仕事を続ける場合に、賃金を引き下げることの是非が争われた裁判で、最高裁は減額を認める判決を出した。

ただ最高裁は、賃金格差が不合理かどうかについて、給与や手当など各賃金項目の趣旨を個別にみるべきだとする判断を示した。待遇に差を設ける場合に企業は、理由を十分に説明する責任があることを銘記すべきだ。

横浜市の長沢運輸のトラック運転手3人が、定年前と同じ仕事なのに賃金を2~3割引き下げられたのは不当と訴えていた。一審の東京地裁は会社に定年前と同水準の賃金支払いを命じた。二審の東京高裁は定年後の賃金引き下げが社会的にも容認されているとし、原告側の逆転敗訴とした。

最高裁は、定年後の再雇用では長期雇用が想定されておらず、一定の条件を満たせば老齢厚生年金の支給もあることなどを考慮。給与や手当の一部、賞与をカットしたのは不合理ではないとした。

日本企業は一般に、長く勤めるほど職務遂行能力が高まったとみなして賃金を上げていく。しかし人件費を抑えるため、定年制という形で一定年齢に達したら雇用契約を解除する。定年後の再雇用にあたって定年時の賃金を維持することは想定していない。

こうした実態を最高裁判決は踏まえたものといえる。企業が希望者について定年後の雇用継続を義務づけられていることを考えれば、人件費増で経営が圧迫されることを防ぐための賃金減額はやむを得ない面もあろう。

もちろん、説明のつかない待遇格差は働き手の納得を得られず、是正していかなくてはならない。

同時に判決のあった、正社員と契約社員で手当の支給に差をつけることが違法かどうかが争われた物流会社ハマキョウレックスの訴訟で最高裁は、通勤手当や無事故手当、皆勤手当などでの格差を不合理とした。

日本企業の賃金制度には年功色が根強く残り、透明で公正とはいえない面がある。賃金決定では仕事の中身や責任の度合い、本人の役割などを総合的に考慮し、個人の納得を得る努力が求められる。

企業が処遇の理由を十分に説明しようとすれば、現行の制度のどんな点に問題があるかも、おのずとみえてくるだろう。

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