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春秋

「同族嫌悪」という言葉がある。自分に似たような容姿や性質を持つ人に対して抱く悪感情のことだ。鏡に映るもう一人の自分を見ているようで、いたたまれない気持ちになる。そんな経験を持つ人もいるかもしれない。若者言葉ならば、「キャラがかぶる」だろうか。

▼この感情を無意識の働きとして学問的に掘り下げたのが、心理学者ユングだ。他人に知られたくない隠れた自分の気質を「影」と定義。自分の影を他人の言動に見いだし、批判する行為を「投影」と呼んだ。虫が好かない存在は、案外、あなたに似た人かもしれない。河合隼雄さんの名著「影の現象学」が平易に解説する。

▼例えば、国会答弁との整合性を保つため、公文書改ざんを部下に命じた官僚。危険なプレーを選手に命じながら責任逃れに走った運動部の監督とコーチ。人びとの感情をいたく刺激するあの人たちの言動は、私たち自身の影かもしれない。まさか。でも、否定しきれるだろうか。仕事で、彼らに近い振る舞いはなかったか。

▼アンデルセンに「影法師」という怖い童話がある。ある日、学者が自分の影をなくしてしまう。影は独立し、やがて学者を支配する。ユングのいう「影」、もう一つの自分と向き合わないと身を滅ぼすという警鐘だ。世間を騒がせるあの人たちが、批判されるのはもっともだ。でも、自身を省みるよすがとするのは難しい。

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