2018年6月24日(日)

米国は鉄とアルミの高関税を撤回せよ

社説
2018/6/2付
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 米国が欧州連合(EU)、カナダ、メキシコから輸入する鉄鋼とアルミニウムにも高率の追加関税を課した。安全保障を理由とした輸入制限を認める米通商拡大法232条の発動である。

 相手国・地域はいずれも報復措置に動く構えで、本格的な貿易戦争に発展してもおかしくはない。トランプ米政権は世界経済の安定に目配りし、一方的な追加関税を撤回すべきだ。

 米国は日本や中国などを対象とする輸入制限を3月に発動し、鉄に25%、アルミに10%の追加関税をかけている。これらの輸入増が国内産業を衰退させ、国家の安全も脅かすという理屈だ。

 EU、カナダ、メキシコには猶予期間を与え、追加関税を免除する代わりに対米輸出の数量規制などをのむよう迫ってきた。その交渉が決裂し、日本や中国と同様の制裁が始まった。

 鉄とアルミの輸入制限は、米通商拡大法232条の乱用とみなさざるを得ない。安保を名目に貿易赤字を減らしたいのが本音で、世界貿易機関(WTO)のルールに抵触する可能性がある。

 米国は同じ法律に基づいて、乗用車やトラック、自動車部品にまで追加関税を課すことも検討し始めた。鉄とアルミだけでも問題が大きいのに、ここまで踏み込むのは到底許されない。

 米長期金利の上昇や欧州の政治不安を背景に、世界経済の先行きには不透明感が漂う。米国が不毛な貿易戦争を仕掛け、景気の回復を妨げるのでは困る。

 米国の同盟国や友好国との関係が悪化すれば、北朝鮮の非核化を含む国際的な課題への対応力も鈍ってしまう。トランプ政権は強硬措置を自制し、交渉を通じて貿易不均衡を是正すべきだ。

 日本やEUなども連携を深め、トランプ政権の軌道修正を強く促す必要がある。WTOへの提訴といった対抗措置を講じ、輸入制限の撤回を求めたい。

 米国の暴走をここで封じておかないと、一方的な制裁がエスカレートする恐れがある。「自分の国・地域さえ適用除外になればいい」という問題ではない。

 日米欧7カ国(G7)は2日までカナダで財務相・中央銀行総裁会議を開く。8~9日には首脳会議(サミット)も開く運びだ。トランプ政権の保護貿易政策に歯止めをかけるため、日本もあらゆる手立てを尽くす必要がある。

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