起業家が挑む格闘技復権
SmartTimes (田中勇一氏)

2018/6/6 6:30
保存
共有
印刷
その他

「選手のセカンドキャリアを確立させることが、世界に通用する格闘家養成に必須である」。格闘技専門のスポーツアカデミーを運営する株式会社Y&Kコミュニティーズ(神奈川県藤沢市)の代表取締役山城裕之さんは、そう語る。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

日本でプロの格闘家として活動していくことは難しい。「K-1」や「PRIDE」などのイベントが大みそかにテレビ中継されブームになったが、運営会社のゴタゴタなどの影響もあり、今は一時ほどの人気はなくなっている。

プロの道に興味をもつ人は一定の割合でいる。ただ、日本では活躍できる機会が多くないため投資に二の足を踏んでいるのが現状だ。一方、米国ではテレビなどを通したプロモーションが功を奏し、格闘技はメジャーな興行となり、選手には桁違いのファイトマネーが手に入るようになった。今や格闘家として一流になるには、米国で成功するのが早道だ。

前述の山城さんが格闘技を始めたのは、近所の空手道場に通い始めたことがきっかけ。尊敬する師匠からは人としての生き方や礼儀作法も学んだ。プロの格闘家経験もある山城さんは、ビジネスの世界でも才能をいかんなく発揮する。外食や介護業界の企業で店舗開発などの経験を積みながら、社内ベンチャーとしての格闘技アカデミーを提案し設立、運営をしてきた。

転機が訪れたのは4年ほど前。自らが急病で倒れ救急車で搬送される体験をした直後に、父親が他界した。そして、かつて通っていた空手道場が閉鎖に追い込まれた。

これまで自分を育ててくれた親や道場の方々、格闘技でかかわったその他の人たちの恩に報いたい。格闘技人気を復活させ、世界で通じる選手を育てる「格闘技ジムフランチャズシステム」を構築しようと、社会起業大学の門をたたいた。

才能のある若手が格闘技に打ち込めるようにするにはセカンドキャリアの確立が必要だ。選手期間中も引退後も働くことのできる受け皿を人材不足に悩む介護や外食サービス業界で整備できないか。山城さんはこう考え、企業に法人加盟することで実業団制度を利用するスキームを作った。

この事業プランは、社会起業大学が主催する「ソーシャルビジネスグランプリ2015冬」で賞を獲得。設立した格闘技アカデミーでは、体力増強だけでなく礼儀作法も学ぶキッズクラスを設け、山城さんが学んできた武道の精神を日々伝えている。今後は、セカンドキャリア支援システムが備わった格闘技アカデミーを全国に広げ、各地から世界に通用するプロ格闘家を輩出していく考えだ。

「義」を重んじる武道の考え方は、公益性を重視する公益資本主義に通じる。山城さんは元格闘家だけではなく、公益資本主義を世界に広める社会起業家でもあるのだ。

[日経産業新聞2018年6月4日付]

電子版の記事が今なら2カ月無料

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]