2018年6月24日(日)

本気度疑われる政府の財政健全化目標

社説
2018/6/1付
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 政府の新たな財政健全化の目標づくりが大詰めを迎えている。従来は2020年度としていた国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化の時期を25年度とする方向だ。今度こそ財政健全化に本気で取り組むつもりなのか、政府の決意が問われている。

 安倍晋三首相は昨年の衆院選前に19年10月に予定する10%への消費税率引き上げ分の税収の使い道を、借金返済から教育の無償化などに変更し、PBの20年度黒字化目標を断念した。

 政府はそれにかわる新しい目標を6月中旬に閣議決定する経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に盛り込む予定だ。

 政府の検討原案によると、PB黒字化の時期を25年度へと5年先送りしたうえで、21年度に3つの指標を使って進捗状況を中間検証するという。

 すでに原案段階で、政府の財政再建への本気度が疑われる問題が浮上している。まずは、健全化計画の前提となる経済成長率を実質2%、名目3%以上と高めに見積もっていることだ。成長力を高める努力は必要だが、財政健全化を確実に進めるには、前提の成長率を甘く見積もるべきではない。

 前回の目標づくりの際は16~18年度の3年間の社会保障費の伸びを合計1.5兆円程度に抑える目安を設定した。今回は財政健全化の裏付けとなる歳出抑制の数値の目安を決めない方向だ。

 歳出抑制策で踏み込まないのは、来年10月に予定する消費税率引き上げの景気への悪影響を和らげる財政出動の余地を残すためとの見方もある。

 消費税率上げ前後の駆け込み消費と反動減をならすための対策は検討に値するが、それは消費税の価格転嫁指導や民間の新商品投入策の見直しなどで実施すべきだ。消費税率を上げるために、財政出動を繰り返すのでは、財政健全化は進まない。

 安倍政権は12年の与野党3党合意で決まった消費税率の10%への引き上げを2度にわたって延期した。本来なら今ごろは、消費税率10%の先の財政・社会保障の改革を検討すべき時期だ。

 財政健全化は増税だけでなく、公的年金の支給開始年齢や75歳以上の高齢者の医療の窓口負担の引き上げなど社会保障の制度改革も不可欠だ。高齢化が急速に進む中で残された時間は少ない。

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