2018年6月18日(月)

春秋

春秋
2018/5/27付
保存
共有
印刷
その他

 ニッポンの紙幣づくりの技術は世界一だという。いまの1万円札が世に出るとき、原版に肖像を彫る旧大蔵省の工芸官は匠の技を駆使し、極めて偽造が難しい福沢諭吉を誕生させた。その名人を取材すると、ストレスで胃をやられて半分切った、と苦笑していたものだ。

▼入魂の職人芸と最新のテクノロジーが融合した、われらが日銀券である。だから人々のお札への信頼は厚く、いつでもどこでもまず現金を財布から出すのかもしれない。それにすっかり慣れていたのだが、気がつけば海外ではキャッシュレス化が急速に進んでいる。日本はもはや現金主義のガラパゴス状態とさえいわれる。

▼先ごろ韓国を訪れて驚いたのは、どんな小さな店でも食堂でも、レジで現金のやり取りをほとんど見ないことだ。クレジットカードや電子マネー、さらにはQRコード読み取りも幅をきかせ、およそお札の出番がない。韓国のキャッシュレス決済の比率は9割と断トツだが、欧米でも5割は超える。日本は2割程度という。

▼日本人の現金主義はATM網の発達をもたらし、それがまた「信仰」を増幅してきた。キャッシュレス化が進めばそんなATMだって維持費が減り、小売店の負担も軽くなるが、2027年で4割という政府目標の達成も微妙だという。こうなったら、美しく安全なお札を体験するツアーなど外国人に売り込みますか……。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ

関連キーワード



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報