セクハラを許さない職場に
政府の男女共同参画会議が、女性活躍のために重点的に取り組むべき事項をまとめた。セクハラ根絶対策の推進が大きな柱だ。
これを受け、政府は6月に「女性活躍加速のための重点方針」を決める。この中で、セクハラをこれほど重視するのは、今回が初めてとなる。企業などは政府の決定を待たず、対応を急いでほしい。
男女雇用機会均等法は、セクハラの防止措置をとる義務を企業に課している。だが、取り組みは不十分だ。厚生労働省の調査では、セクハラ対策をしていない企業は中小企業を中心に4割を超え、相談窓口がある企業は3割以下だ。仕組みがあっても、どこまで機能しているかはまた別問題となる。
セクハラ被害は女性を深く傷つける。さらに追い打ちをかけるのが、職場は守ってくれるのかという不安だ。働く女性は増えたが、古くからの男性中心の意識はなお根強い。「この程度で目くじらを立てるな」と被害を軽視し、受け流すことを求めがちだ。結果、ひとりで抱え込む女性は多い。
男女共同参画会議は、セクハラが「重大な人権侵害」であることを改めて指摘した。セクハラを許さないという断固たる姿勢をトップ自ら社内外に示し、中間管理職にも徹底する。被害者のプライバシーを守り、丁寧に対応する。加害者が取引先などの外部であっても、組織同士で毅然と対応する。取り組むべきことは多い。
心配なのは、いたずらに女性を仕事の一線から外す方向に走ることだ。女性を特別扱いするようなやり方では、本質的な解決にはつながらない。変えるべきはセクハラの温床となってきた職場風土や社会の意識の方だ。
対策が遅れれば、社員の流出や意欲低下はもちろん、企業イメージの悪化や投資家からの信頼を失うことにつながる。セクハラ対策は重要な経営課題であり、多様な人材が力を発揮する職場づくりの大前提となる。「女性の活躍」や「ダイバーシティー経営」を口先だけにしてはならない。
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