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北の核放棄へ国際社会は引き続き結束を

歴史的な会談がひとまず幻に終わった。トランプ米大統領が6月12日にシンガポールで予定していた史上初の米朝首脳会談を中止すると表明した。北朝鮮の核問題で将来に禍根を残して合意するぐらいなら取りやめるべきだと判断したとすればやむを得ない。

北朝鮮の非核化と北東アジアの平和構築への大きな一歩になるかと世界が注目していた。それだけに突然の中止発表は、米朝間に横たわる溝の深さを印象づけた。

米国は「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を短期間で実現するよう求めている。北朝鮮は一括放棄を受け入れず、非核化に向けて段階的な措置をとるたびに見返りを受ける方式を譲らない。

トランプ政権は「過去20年の北朝鮮政策の失敗を繰り返さない」と強調してきた。米朝首脳会談の中止の理由については、北朝鮮による「直近の声明に表れた激しい怒りとあらわな敵意」を挙げた。北朝鮮が本気で核を放棄するという確信を持てなかったようだ。

対話解決の機運が一転、緊張局面に後戻りする恐れが出てきたが、そう決めつけるのは早計だ。トランプ氏は金正恩委員長宛ての書簡で会談の実現を非常に楽しみにしているとし、「究極的に重要なのは対話だけだ」とつづった。

北朝鮮も「大胆で開かれた心で米国に時間と機会を与える用意がある」との談話を発表した。米国への反発を抑えているのは注目される。米朝首脳会談は金正恩体制の保証を得るための宿願であり、米国との駆け引きがなお続く。

米政府内では、北朝鮮の後ろ盾として影響力を強める中国への警戒感が広がっている。米朝対立の底流に中国との覇権争いがみえる。今後の北朝鮮問題は米中関係が密接に絡む展開も予想される。

肝要なのは、「完全な非核化」を実行に移す仕組みだ。北朝鮮を対話の場に引きだした米国による軍事圧力と、国際社会による制裁包囲網を続ける必要がある。

北朝鮮が中国やロシアとの関係強化に向かえば、北朝鮮をめぐり日米と中ロが対峙する枠組みが強まりかねない。そうなれば非核化は遠のく。中ロが持つパイプも生かしながら、完全な核放棄を北朝鮮に迫っていくほかない。

日本政府は北朝鮮への圧力路線を基本にしつつ、「拉致・核・ミサイル」の包括的な解決への取り組みを再構築する機会として米朝首脳会談の中止を生かしたい。

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