2019年6月17日(月)

「小国」の危機感が革新生む
SmartTimes (加藤史子氏)

2018/5/30 6:30
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投票も納税も国民IDにより電子化されていることで有名なエストニアはベンチャー起業も盛んで、日本から視察やビジネスで訪れる人が後を絶たない。人口は130万人超。東京都の人口は1300万人を超えるので、その10分の1ほどの小さな国だ。

慶応大卒、1998年リクルート入社。ネットの新規事業開発を担当した後「じゃらんリサーチセンター」に異動し、観光による地域活性化事業を展開。2016年WAmazing創業。

慶応大卒、1998年リクルート入社。ネットの新規事業開発を担当した後「じゃらんリサーチセンター」に異動し、観光による地域活性化事業を展開。2016年WAmazing創業。

エストニアには2つの独立記念日がある。1つは1917年のロシア帝国崩壊後の独立の日。ソ連への併合を経て、2つ目の独立記念日は1991年、ソ連崩壊後のものである。その歴史からもわかるように、常に隣接する大国、ロシアからの侵略・支配にさらされてきた。

いつまた国家が消滅しても不思議ではないという危機感。アイデンティティー維持へのモチベーション。これらが最大化したとき、世界ではインターネットが普及しはじめていた。これらの潮流が結びつき、たとえ国家が消滅してもインターネットを通じてナショナリズムを維持できるIT先進国エストニアが誕生した。世界中をネットの無料通話でつなぐプラットフォームとなったSkype(スカイプ)もエストニアの生んだベンチャー企業だ。

私は5月中旬、シンガポールにいた。Tech in Asiaというアジア最大級のベンチャーコミュニティが運営するカンファレンスに出席し、日本貿易振興機構(ジェトロ)が用意してくれたJAPANブースで、日本発ベンチャーの1社として出展やプレゼンテーションを行った。

そこで様々な国からきた多様なスタートアップと話をしたが、エストニアと同じく危機感が生むイノベーションの姿を強く感じた。

例えばシンガポールの人口は約550万人。日本なら兵庫県とほぼ同じ人口で、同国だけを考えれば市場は小さい。しかし、格安航空会社で1時間飛べばマレーシアの首都クアラルンプールであり、2時間飛べばインドネシアの首都ジャカルタに行ける。シンガポール発のベンチャーは最初から世界しか見ていない。

当社のブースに、あるスタートアップが話しかけてきた。両替サービスのCtoC事業を展開しているという。日本円を得たい人とドルを得たい人をアプリでマッチングさせ、個人間両替を実現する。両替所を利用するよりも手数料が安いというメリットがあるそうだ。当社が外国人旅行者向けにサービスしていることを知り、事業で組めないかと話しかけてきたのだ。

シンガポールらしい発想の事業だと感じた。小さきものこそ、つなぐこと、世界のハブ(中軸)であることに存在価値を見いだし、全てを賭ける。

日本は世界第3位の経済大国だが、少子高齢と人口減少による規模の縮小も必然の未来として予測されている。大きいものが、どこまで小さくなる未来をリアルに感じることができるか。その危機感の程度が日本の未来を変えるだろう。

[日経産業新聞2018年5月28日付]

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