人材不足のせいなのか
SmartTimes (スティーブン・ブライスタイン氏)

2018/5/28 6:30
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経営トップの方々からよく聞く悩みに「市場には需要が存在しているのに、人材が見つからないため、ビジネスを伸ばせない」というものがある。

しかし顧客に提供するものの価値を上げ、それに見合った値段を設定することでビジネスを成長させるという選択肢もあるのだから、ほとんどの企業にとって労働力不足など問題にはならないはずである。人を雇う代わりに必要となってくるのは、現在のやり方を変えることと、必要であれば利益を出している商品・サービスであっても廃止する勇気を持つことである。

米国ボストン市生まれ。戦略コンサルティング会社、レランサ(東京・千代田)の社長。国際経営学修士(MBA)とコンピューターサイエンス博士号を取得。

米国ボストン市生まれ。戦略コンサルティング会社、レランサ(東京・千代田)の社長。国際経営学修士(MBA)とコンピューターサイエンス博士号を取得。

例えば、種子製造会社のVilmorin-MKSは全体の売り上げの約半分を担い、高い利益も出していた農業用マテリアルの卸業ビジネスを廃止した。コア・ビジネスの種苗に力を注ぐためだ。結果として、業績は驚くほど伸びた。

一方、ある日本のグローバル広報会社は、顧客の需要に対し十分なサービスを提供できないような状態になっている。追加リクエストに応えられる有能なスタッフが足りず、新たに雇用しようにもいい人材が見つからないという。

この会社の経営トップは、単なる広報サービスの提供より、ビジネス成果を上げる広報戦略を開発し実行することの方により価値があると気付き、そういった仕事を増やしていきたいと感じていた。しかし、こうした高価値サービスの売り込み先は、通常付き合いのあるマーケティング部門の人々ではなく、高レベルの経営幹部だ。

広報会社の担当者はクライアントのマーケティング部門から言われたことを処理するのには慣れていても、シニアレベルの経営幹部とビジネスコンサルティング的な会話をすることは苦手だった。通常の仕事をするだけで十分忙しかったので、特に努力もしなかったし、経営トップも現在のビジネスからの収入を手放すようなことはしたくなかったから、結局何も変わらなかった。

問題は人材不足ではなくビジネスモデルにあり、たとえ新しい人材を雇っても解決するものではない。

アクセンチュアのようなコンサルティング会社が、広告や広報といったエリアでも存在感を増している。また米グーグルのような企業が広告事業だけでなく、アドバイザリー、キャンペーン戦略といったサービスも提供するようになったら、広報業界に大きな影響が出るのは必至だ。

前述の広報会社は、何か変革を起こさなければ、どんどん縮小していく運命から逃げられないだろう。

あなたはビジネスをどのように成長させたいのか。価値を上げて成長するという選択肢はいつでもあるのだから、ビジネスが伸びない理由を労働力不足のせいにすべきではない。市場や労働力の変化に振り回されずに、自分の運命は自分でコントロールしてほしい。

[日経産業新聞2018年5月25日付]

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