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人手不足、ITが切り札 現場力高めるチャンス到来

奔流eビジネス (D4DR社長 藤元健太郎氏)

外食やアパレル産業など多数の現場を持つ業界で、慢性的な人手不足が続いている。最近は「働き方改革」が叫ばれ、これまでの労働集約と過重労働に支えられてきた現場は生産性向上を迫られている。こうした状況の中で生産性向上の切り札として期待されているのが、ICT活用だ。

業務ノウハウを動画で共有できる「ソーイージーバディー」の画面

神奈川県にある老舗旅館の元湯陣屋は、セールスフォース・ドットコムのシステムをベースに情報共有ツールを開発した。従業員が顧客の予約状況や料理の好み、設備データなどを効率的に管理することで、10年で売り上げを倍増。売り上げを増やす一方で従業員を120人から70人にして、旅館では珍しい週休3日を実現するという劇的な生産性向上を実現している。

デジタルネーティブである若い従業員は、LINEやYoutubeなどチャットと動画に慣れ親しんでいる。この世代を意識したスマートフォン(スマホ)での手軽な従業員教育ツールも登場している。

soeasy(ソーイージー、東京・新宿)が提供する「ソーイージー バディ」は動画コンテンツで接客手法やセールストークなどを提供し、短い時間で社員がスマホ動画を見ることで教育が可能な環境を実現している。役立つ動画に「いいね」をつけることで現場の評価がフィードバックされ、従来のウェブラーニングよりもより感覚的に理解しやすいこととが特徴だ。

チャットでリアルタイムに現場ノウハウを共有できたり、実際に視聴したかどうかも管理画面で確認できたりする。代表の飯尾慶介氏は「人工知能(AI)で組織貢献度を偏差値として可視化することが可能なため、優秀な従業員が積極的に研修に関わるようになったケースもある」と語る。ある化粧品会社では、導入店舗の1カ月の平均販売個数が非導入店舗と比べて約6割多かった。SNS(交流サイト)感覚で仕事の成果が高まることにモチベーションを感じる若手も増えているかもしれない。

エンターテインメント分野で注目されている仮想現実(VR)も、現場の安全教育で活用が進む。

工事現場や工場での安全確保は経営における最重要課題の一つだが,研修や監督者の指導だけでは危機意識の植え付けが難しい。これまで体験できなかった事故をVRで仮想体験することができるようになり、従業員の危機意識向上に高い貢献をもたらしつつある。

VRコンテンツ製作の積木製作(東京・墨田)ではすでに安全教育用のパッケージコンテンツを様々な企業と共同開発し、多くの現場に導入している。

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

明電舎では建設現場での仮設足場からの墜落や転落、やけどを仮想体験できる訓練を導入した。JR東日本とは新人の車両整備士が団体行動中に不注意から重大接車事故を体験するコンテンツを開発した。

これまで情報システムは在庫管理やサプライチェーン、顧客情報管理(CRM)など本部の業務効率を第一に高めることに主眼が置かれてきた。スマホの普及や動画、チャット、VRなどテクノロジーの低コスト化で現場で働いている従業員一人ひとりのためのIT(情報技術)投資ができる段階に来たと言える。

人手不足のなか、時間をかけた技能継承などで支えられていた日本企業の現場力の再構築は待ったなしだ。ただ、見方を変えれば、現場力を高める仕組みの構築は、高い競争力の獲得につながるチャンスでもある。情報は会議室で発生するのではなく現場で発生するのだ。IT武装された現場から始まる「現場2.0」の時代ももう始まっている。

[日経MJ2018年5月25日付]

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