2019年6月19日(水)

春秋

2018/5/21 1:18
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維新の英雄にも放言はあった。明治の初め、日本に不利な条約の改正などをめざして米欧に大久保利通や伊藤博文らの使節が派遣された際、これを横浜港で見送った西郷隆盛のエピソードである。東京へ戻る途中、西郷は同行していた板垣退助にこう言ったのだという。

▼「きょう出航した船が沈んだら誠に愉快」。歴史家の家近良樹さんが紹介している。大久保らと、留守を預かることになった西郷らは盟約書を結んでいた。使節団の帰国まで、なるべく新しい政策は行わない、などの中身だったという。新政府の中枢が欠け、しかも手足を縛られたうっぷんがきわどい言葉の動機だろうか。

▼では、この人の場合、どんな思惑で数々の不用意な言動が飛び出すのか。麻生太郎副総理兼財務相である。前次官の不祥事では「セクハラ罪はない」と開き直って批判されたり、後に撤回したものの「はめられた可能性は否定できない」と口走ったりと迷走。衆院予算委では質問者へのヤジで官邸から注意されてしまった。

▼米朝会談を巡り「北朝鮮の専用機が落ちたら話にならん」など西郷の向こうをはるような発言もあったらしい。砕けた人柄をアピールしたいのか、元総理の余裕を見せたいのか。いずれにしろ後半国会の火薬庫のごとくである。西郷ばりに政権を飛び出す気がないなら自重なさるがよい。何しろお友達が揺らす内閣である。

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