2018年10月18日(木)

春秋

2018/5/17 1:13
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恐慌に見舞われた昭和の初めは極度の就職難の時期だった。学生はいかにして難関を突破するかを必死に考え、就職戦術論が急速に発達したといわれる。そのころつくられた「就職いろは歌」は、戦術集ともいうべきものだ。尾崎盛光著「日本就職史」が紹介している。

▼「一応は断られると知るべし」「論より具体案」「はしっこく、こんきよく」に始まり、めだつのはやはり面接対策だ。「待ってる間も試験」「眼(め)は常に相手の眼へ」などが並ぶ。「ほめるのも善し悪(あ)し」は、お世辞は控えめにという戒め。「抜目(ぬけめ)も愛嬌(あいきょう)」と、欠点も武器に転じると励ます。多くはいまも、うなずけよう。

▼が、現在の就職戦線を作者が見たら、驚くのではないか。一部の企業は人工知能(AI)による面接を始めている。スマートフォンなどを通じてAIが学生に質問し、回答内容と音声や表情のデータをもとに、適性やバイタリティーを判定する。面接官との良好な関係づくりに心を砕く、いろは歌の戦術にとっては強敵だ。

▼学生にはAIによる人格の評価への不安もある。個人データ保護のため欧州連合が来週施行する「一般データ保護規則」では、企業の選考を受ける人がAIだけで評価されない権利が明確になる見通しだ。日本でも、人がかかわることが採用の判定のルールになる可能性がある。相手の心をつかむ努力は無駄にはなるまい。

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