2018年7月20日(金)

ESG情報開示が急拡大 成長語れぬ日本の経営者
Earth新潮流 (半沢智氏)

コラム(ビジネス)
2018/5/11付
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 富士通が3月下旬、環境や社会、企業統治の観点から企業を評価する「ESG投資」の説明会を投資家向けに開いた。証券会社や投資信託会社から約50人が来場。その約3割が、ESG関連の肩書を持つ担当者だ。

富士通は投資家向けのESG説明会を開催した(3月20日)

富士通は投資家向けのESG説明会を開催した(3月20日)

 説明会では環境・CSR本部の金光英之本部長が再生可能エネルギーや省エネの取り組み、社会課題解決につながるビジネスの例などを紹介し、参加者からの質問を受け付けた。「環境活動にかかるコストは」「2050年目標を達成するための中期のKPI(重要業績評価指標)は」「ライバル企業と比べて再エネ導入率が低くないか」といった質問が飛んだ。

 「IR活動の究極の目的は、長期投資をしてくれる安定株主の確保にほかならない。ESG情報を積極的に発信し、長期かつ安定的な投資を呼び込みたい」。広報IR室IRグループの池田仁シニアマネージャーは、この会の目的を説明する。

 富士通は16年から毎年ESG説明会を開いており、今年は3回目となる。最初はわずか数人だった参加者は年々増えており、投資家のESGに関する関心が確実に高まっている。

 こうした取り組みは富士通だけでなく、オムロン味の素、コマツ、NEC丸井グループなども実施しており、ESG説明会を開催する企業が相次いでいる。

 背景には、企業にESGの取り組みを求めるESG投資が無視できない存在となってきたことがある。世界サステナブル投資連合によると、16年の世界のESG投資残高は22兆8990億ドル(約2400兆円)に達する。

 日本企業は、従業員や取引先、地域社会との関係を大切にしながら、顧客の満足度を重視した質の高い製品・サービスを生み出す「三方良し」の経営を古くから実践してきた。本来、ESGとの親和性は高いはずだ。

 だが、日本企業への評価は世界に比べ総じて低い。投資家向け情報提供機関であるFTSEラッセルがまとめたESG評価に関する調査によると、日本企業が世界平均を上回ったESGの項目は14項目中わずか1つ。環境先進国を標榜してきたにもかかわらず、環境分野でも5項目中4項目で世界平均に及ばない。

 評価が低くなる原因は大きく分けて2つある。一つは、世界標準の取り組みができていない分野があることだ。

 例えば、女性の活躍は先進国の中では最低レベルだ。内閣府によると、日本の上場企業における女性役員の比率は17年時点でわずか3.6%。15年時点の米国の18%、英国の23%、ノルウェーの39%よりも極めて低いレベルだ。経営の監視と執行の分離や独立社外取締役の活用など、コーポレートガバナンスの体制構築も遅れている。

 もう一つの要因は「情報開示力」の不足にある。

 例えば、統合報告書では掲げる目標を評価するKPIを設定しないと、その取り組みが実行されるとは判断されない。投資家は取り組みの方針や内容だけでなく、将来の競争優位性をどのように考えているかを知りたがっている。これが統合報告書のトップメッセージに盛り込まれていないと評価されない。

 情報開示に加え、投資家とのエンゲージメント(対話)でも企業全体を見渡すトップの説明力が求められる。資産運用額が670兆円を超える大手運用機関である米ブラックロックの日本法人、ブラックロック・ジャパンの江良明嗣インベストメント・スチュワードシップ部長は「良い取り組みをしているのに経営者の表現力不足で損をしている例がある」と話す。

 ESG経営とは、企業と投資家の両者が対話しながら企業価値を持続的に向上させていく経営ともいえる。企業と投資家は共にESGの取り組みを見極める「目」と「対話力」が求められる。

[日経産業新聞2018年5月11日付]

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