2018年8月19日(日)

日本発グローバル製薬への期待と課題

2018/5/8 23:08
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 武田薬品工業がアイルランドの製薬大手シャイアーを買収することで合意した。買収額は約7兆円で、日本企業による海外買収案件としては過去最大になる。日本発のグローバル製薬大手として飛躍できるか、武田の思い切った成長戦略に注目したい。

 シャイアーは患者数の少ない希少疾患薬に強みがあり、事業規模はほぼ武田と肩を並べる。両社の合計の売上高は3兆円を超え、日本勢として初めて世界のトップ10に名を連ねる巨大製薬会社が生まれることになる。

 日本市場に基盤を持つ武田と米国に強いシャイアーは地理的な補完性も高い。20年前には世界の2割を占めた国内医薬品市場だが、今では5%程度にとどまり、武田にとってグローバル化の加速は待ったなしの課題だった。

 加えてシャイアーは革新的な創薬手法として注目される、ゲノム(全遺伝情報)を応用した研究開発でも一日の長がある。武田は画期的な新薬が最近少ないとされ、シャイアーの人材や知見を取り込むことで、創薬のペースを引き上げる狙いもある。

 今回の買収構想を主導したのは4年前に英製薬大手の幹部から転じた武田のクリストフ・ウェバー社長だ。その後同社は人材の国際化を推し進め、今の経営チームはフランス人のウェバー社長を筆頭に日米英加など8カ国の国籍の持ち主で構成される。

 M&A(合併・買収)で最も難しいとされるのが、買収などの完了後に両社のシナジー(相乗効果)を引き出し、企業価値の向上を実現させるための統合作業だ。

 過去の日本企業の大型買収でも統合でつまずき、会社の屋台骨まで揺らいでしまう失敗例が少なくない。国際色豊かな武田の経営陣の真価が問われることになる。

 同時に株主をはじめとする利害関係者の納得を得る努力も欠かせない。買収の報道が先行する中で、借入金の増大など買収負担に伴う財務体質の悪化懸念が強まり、武田株は大きく値下がりした。

 武田の将来になぜシャイアーが必要なのか、そして今回の買収が「高値づかみ」ではなく、財務の健全性を引き続き維持できるという見通しを経営陣は分かりやすく発信する必要がある。

 武田は1781年に大阪で和漢薬の仲買商店として誕生した。老舗企業が放った乾坤一擲(けんこんいってき)の策である。

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