2019年5月23日(木)

未来見据え、働き方再考
新風シリコンバレー (伊佐山元氏)

2018/5/11 6:30
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最新技術による社会の効率化は想像以上に加速している。シリコンバレーでは自走ロボットが出前を配達している。ショッピングセンターや駐車場で警備ロボットを見ても驚かなくなってきた。工事現場の自動化、ドローンによる空からの測量・配送も技術の進化が目覚ましい。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

最近では、人工知能や機械学習等を駆使したRPA(Robotic Process Automation)のような技術により、ホワイトカラーの知的労働までも自動化が急激に進んでいる。

これから急激な人口減と高齢化が予測される日本にとっては、朗報かもしれない。いまだに金融業界では膨大な事務作業や紙の帳票のやりとりが発生している。飲食業や建設業は常に人手不足だ。中小企業の事務作業も人の力に依存し、膨大な時間を浪費している。

第4次産業革命の進展を巡っては、ロボットやコンピューターが仕事を奪うという脅威論がある。一方で、現実は人間が単純労働やルーチンワークから解放され、付加価値の高い創造的な活動に時間を費やすことができる。生産性革命が進行しているとも言える。

もっともこれは、黙って決まった作業をしていれば労働の対価を得られた時代から、能動的に付加価値を創造できる活動をしないと評価されない時代へシフトしていることを意味する。過去の延長に未来を考える働き方ではなく、自ら未来を創る積極的なマインドセットが必要になるわけだ。技術がもたらす環境変化に適応することは、日本にとって大きな課題だ。

今後、われわれは、熱狂できる仕事、生涯をかけて解決したいと思える課題、居心地の良い環境を飛び出して冒険する勇気を持つことができるだろうか。仕事が単なる生活の手段ではなく、自己実現、社会貢献の場になりうるか。

シリコンバレーのベンチャーの生態系がダイナミックに新しい産業を生み出すのも、このエリアの住民が、自分の好きなことに熱中し、得意とする能力を存分に発揮して、社会に付加価値を生み出しているからである。実際に、カリフォルニア州の域内総生産(GDP)はこの20年間で1.7倍となり、その規模は世界ランクで見ても英国に次ぐ第6位である。

そう考えると、昨今の日本での働き方改革の議論には大きな違和感を感じる。今必要なのは、形式的な労働環境の規制や監督の話ではない。生きがいを持ち情熱をささげられる仕事を見つけるための支援体制や仕組み作りなのではないか。週末起業や、兼業、ベンチャーのアドバイザーやノンプロフィット組織での活動――。自分の天職を見つけるための探索の自由、機会の拡大は不可欠だ。

外の世界を見ることで所属する会社や組織から飛び出してしまう人材もいるだろう。一方で、飛び込んだ先での経験が新しい知恵を生み出し付加価値創造に貢献する人も増えるはずだ。我々も微力ながら、ベンチャーの支援を通じて、希望と情熱にあふれた労働環境を増やしていきたい。

[日経産業新聞2018年5月8日付]

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