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ラグビーW杯制した名将に聞く ウェイン・スミス氏
神戸製鋼総監督

2018/5/8付
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 2019年ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会の開幕まで、8日であと500日となった。日本は初の8強入りに向けて牙をとぐ。この最高の大舞台で結果を出すために必要なものは何か。指導者として過去にW杯を制し、今は日本で教える名将にW杯の勝ち方を聞いた。(聞き手は谷口誠)

神戸製鋼の総監督に就任したウェイン・スミス氏

神戸製鋼の総監督に就任したウェイン・スミス氏

 W杯を2連覇中のニュージーランド(NZ)代表、オールブラックス。この最強軍団を作り上げたキーマンが今年、来日した。神戸製鋼の総監督に就任したウェイン・スミス氏。「教授」の異名を持つ知将は、大舞台に臨む心の準備と組織づくりの重要性を説く。

 「W杯で勝つためにチームの土台を変えることが必要だった」とスミス氏は振り返る。アシスタントコーチに就いた1998年、NZ代表は低迷していた。復調の道をたどったもののW杯の王座は遠く、優勝候補だった2007年大会は準々決勝でフランスの気迫にパニックとなり敗戦。チームのトラウマになった。

 「選手は目の前の仕事をクリアすることだけにフォーカスしてしまっていた。他の国と同じくらいに感情のレベルを高めることが大きな課題だった」。自分たちの高い技術を発揮すればほとんどの試合で勝ててきた。その一方、大舞台でさらにわき出るものがなかった。格闘技でもあるラグビーで大事な要素が抜け落ちていたという。

 頭と心を鍛えるため、「教授」は戦う目的を明確に設定した。自分は何のため、誰のためにW杯で勝ちたいのか。危機での修正力を磨こうとチームの根本にも手を着けた。「コーチが権力を持つのではなく、選手と共同でマネジメントする仕組みにした」。選手数人のリーダーグループと、練習の内容ひとつから話し合いを設ける。グラウンドでは命令よりも問いかけることに徹した。

 改革は自国開催の11年と15年大会の連覇に結実した。今では海外勢も同様の共同統治を採用するが、スミス氏は形だけの模倣にはクギを刺す。「必要なのはリーダー陣の正しい選考だ」。条件になるのは選手としての実力と最後まで走り続ける体力、そして人間性を高めようとする向上心を備えているか。「より良い人間が、より良いオールブラックスをつくる」という哲学があるからだ。

 向上心を測定するシステムもスミス氏は構築した。「例えば、攻撃が自分とは反対側のサイドで始まった時、守備側を惑わすために前へ走っているか。相手を追走すべき時に一生懸命走っているか。タックルなど1つのプレーが終わった後、すぐ次のプレーに移ろうとしているかを見る」

 選手の「心」は身体能力や技術などの数値とともにNZラグビー協会のデータベースに記録される。対象は多岐にわたる。スーパーラグビーと国内リーグでプレーする全員に、強豪国の選手までゆうに数百人。スターを量産する「ラグビー王国」には哲学とデータの裏付けがあるのだ。

 その分析眼は対戦相手へも向かう。「ウェインは過去2年間の全試合の全てのプレーを覚えている」。W杯連覇をともになし遂げた元主将のリッチー・マコウ氏の証言を、スミス氏も否定しない。「毎試合、相手の分析に100時間掛けてきた。でなければ勝てない。この20年間、空いた時間はほとんどなかった」

 病を患ったこともあり、昨秋にオールブラックスを去った。しかしその遺風は今も残る。「全てのスタッフが毎年、個人として必ず成長しようとしている。オールブラックスはカイゼン(改善)の生きた見本なんだ」。選手やコーチだけでなく、ラグビー協会を挙げての向上心で王座を守り抜いている。

 NZ代表として17試合に出場。引退後、クルセーダーズ(NZ)の監督としてスーパーラグビーを2度制覇した。1998年からNZ代表のコーチに就任。2000~01年にヘッドコーチ(HC)を務め、11年、15年W杯は守備担当のコーチとして連覇に貢献。61歳。

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