2018年5月21日(月)

スプリント再編が映す通信市場の変質

社説
2018/5/2付
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 ソフトバンクグループ傘下で米携帯4位のスプリントと同3位のTモバイルUSが2019年をメドに合併することを決めた。日米を含めた先進国では通信市場が成熟化し、通信各社は新たな成長戦略を模索している。米通信再編がどう展開するのか、その行方に目を凝らしたい。

 今回の合意で注目されるのはソフトバンクの方針転換だ。同社は5年前に約2兆円を投じてスプリントを傘下におさめ、昨年11月にはスプリント株の買い増しを決めたばかりだ。孫正義会長兼社長は「5年、10年の単位でみて、戦略的に欠かすことができない」とスプリントの重要性を強調した。

 だが、今回の統合案では合併新会社の経営の主導権はTモバイルの親会社であるドイツテレコムが握る。新会社に対するソフトバンクの出資比率は27%まで下がり、連結対象からも切り離されることで、関係の希薄化は必至だ。

 短期間の戦略変更の背景に何があるのか、孫会長は株主にしっかり説明する必要がある。

 世界を見渡すと、スマートフォン需要の一巡や、自前の通信網を持たずにサービスする「MVNO」の台頭もあり、携帯市場の伸びしろは年々小さくなっている。次世代規格「5G」の商用化に向けた巨額の投資が目前に迫るなかで、新たな収益源となる事業モデルの確立も今後の課題だ。

 そこで各国の有力通信会社は過去の通信インフラ事業の延長線上にはない、新サービスの開拓に乗り出した。米AT&Tはタイムワーナーの買収をめざし、司法省と係争中だ。映像コンテンツと通信サービスを一体で提供し、ネットフリックスなどの新興の動画配信企業に対抗する戦略だ。

 日本でも、個人ユーザーを奪い合う価格面の競争は一段落し、NTTドコモが建機のスマート化でコマツと提携するなど、法人パートナーと組んで通信の新たな用途を開発する動きが盛んだ。

 嗅覚鋭い投資家として知られる孫会長にとって、人工知能やシェア経済など従来型の通信サービスよりも魅力的な投資対象が現れたことも、今回の決断を後押ししたのかもしれない。

 スプリントとTモバイルの統合構想は過去にもあったが、競争政策の観点から米当局が認めず、頓挫した経緯がある。トランプ政権の競争政策を占ううえでも、合併審査の行方に注目したい。

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