2019年5月24日(金)

日本流では人は採れず
新風シリコンバレー (西城洋志氏)

2018/5/4 6:30
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多くの日本企業がシリコンバレーに進出する際に課題のひとつとなるのが、人材の獲得である。進出の目的が新事業開発・ベンチャー投資の場合はもちろん、研究開発拠点を開く場合も同様に課題になる。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

新事業開発・ベンチャー投資系人材の獲得における課題は、報酬体系・報酬絶対額、業務内容(権限委譲の度合い)などだ。多くの場合、これまで日本国内、あるいは海外拠点で適用してきた基準では太刀打ちできないケースが多い。

また、終身雇用の文化が色濃く残った人事体系は、流動性の高い当地になかなか合わない。ジョブホップされるのではないかと思い積極的な提案ができないとか、解雇のリスクを過剰に見てしまうとか。

後者の開発系人材獲得は比較的容易(社内にエンジニアも多く、目利きができるから)と思われている方も多いが、実際には逆で非常に難しい。特にマシンビジョンや人工知能(AI)、ロボティクスなどいわゆるホットな技術領域の人材獲得は至難の業である。

まず認識すべきは、日本のエンジニアは世界的に見ても相当安い相場であるということ、そしてシリコンバレーは世界的に見て非合理なほどに高い相場であるということだ。さらに、報酬条件は必要条件であり、十分条件ではないということ。アップルやグーグルなどの有名どころはもちろん、意気軒高な新興企業は、出資により得た高額のキャッシュと大きな成長可能性を秘めた会社のエクイティを提示して人材獲得に躍起になっているのだ。

日本企業においては、必要条件である報酬面をまずはクリアし、業務内容の魅力で勝負するのがいいと思う。彼らは成長欲の塊なので、強化したいスキルや経験を伸ばせる機会の提供というのが効果的である。

米国では通常ジョブデスクリプションという業務内容の定義を用意して人材を採用するが、私はリーディングポジションに関しては「人中心」の採用を試みている。その人が成し遂げたいことと当社の興味範囲の中で整合性を取ってやっていく方法である。

人の育成という面では、おもしろい動きが生まれている。日本の中学生・高校生がシリコンバレーで研修するというもので、私も微力ながらお手伝いしている。先日は神奈川の聖光学院の学生20名ほどが来られ、企業訪問や企業紹介、アイデアソンのようなイベントへの参加など濃密な日程をこなしていた。彼らの好奇心に満ちた質問や学び取ろうという姿勢に強く感銘を受けた。誤解を恐れずに言えば、日本企業の視察団よりも真剣であり、素直である点で、イノベーションのエコシステムの理解が本質的で速いように感じる。

こういった視察を支援されているのは、シリコンバレーにいる日本人の方々、特にこちらに定住されている方々であり、彼らは「次代を担う人への貢献・投資」をしているのだ。

このように何事も「人」中心で考えるのがシリコンバレーである。

[日経産業新聞2018年5月1日付]

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