米EV市場、走り続ける
新風シリコンバレー (フィル・キーズ氏)

2018/4/27 6:30
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米テスラの電気自動車(EV)部門は最近、現地メディアから多くの批判を受けている。例えばニューヨーク・タイムズの報道。2018年第1四半期の新型車「モデル3」の生産台数は1万台を下回った。主力セダン「モデルS」と多目的スポーツ車(SUV)「モデルX」の納入は17年第4四半期に比べて23%落ちたとし、「EV市場の拡大に疑問を持つ」との自動車産業のコメンテーターの発言を掲載した。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

ただ、筆者はこの発言に納得できない。シリコンバレーでは、EVは一般的な自動車になりつつある。私の周りには蓄電池だけで駆動するBEVの持ち主が私も含めて5人いて、そのうち1人は2台目のBEVで走っている。

カリフォルニア州の一部の道では、通勤ラッシュの時間帯にクリーンな自動車などのための専用車線が設定されるが、ここにはEVが満ちあふれ、「他の運転手からクレームが出ている」とメディアが報じている。また、シリコンバレーでは、従業員用の駐車場に充電装置を設置する企業が増えている。

全米のEV販売台数をみても、消費者のEVへの関心が薄れているとは思えない。「INSIDEEVs」というウェブサイトによると、18年3月に全米のEV販売台数は2万6373台となった。前年同月比で約70%の増加だ。

モデルSとモデルXの販売数字が落ちたのは、消費者の関心が薄れたのではなく、別の理由があるように思う。一つは消費者の選択肢が増えたことだ。ブルームバーグの専門部門の情報によると、モデルSが登場した12年は燃料電池の自動車を含むと合計17種類のEVが全米で販売中だった。17年は、25のBEVを含め合計57種類が市場に流通している。

また、12年ならモデルSの走行距離と競争できるBEVはなかった。現在はモデルS、モデルXと同程度の走行距離を持ち普及価格帯に近い米ゼネラル・モーターズの「ボルト」、モデル3が市場に流れている。18年は高級車のBMW、メルセデス・ベンツ、ポルシェ、ボルボが市場参入する。ジャガーも入ってくる。

つまり、競争が激しくなっていることが、テスラのEVの販売低下の重要な理由だと考えられる。全米の自動車市場でのEVのシェアはまだ1%未満であることは事実だ。だが、米国のEVを巡る近未来には楽観的な要素がかなりある。

まず、カリフォルニア州の自動車市場は歴史的に最先端を走っており、ここで新技術が生まれていく。これを起爆剤に上記で書いたように米国の消費者が望む価格帯で、走行距離が比較的長いBEVが市場投入される流れも始まっている。

さらに、米政府のEV購入のための補助金制度が、とりえず18年は残っている。充電ステーションを増やすといった支援活動が続いている州や街も多い。中国政府が国策として推進しているEVの波は、米国市場でも受け入れられる余地が十分にある。米国のEV市場に対し、必要以上に悲観的になる必要はないのだ。

[日経産業新聞2018年4月24日付]

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