春秋

2018/4/16 1:22
保存
共有
印刷
その他

人々に愛されてきた街角の書店が廃業する。そんなニュースに触れる機会が増えた。「本屋ゼロ」の市町村・行政区が全体の2割を占めると聞いて驚いた。若者が本を読まない。ネットでの注文が当たり前になった。近年、毎日1軒のペースで書店が消えているという。

▼東日本大震災で被災した本屋は700以上。「東京の書店まで車を走らせ、自分で雑誌を買ってみんなに渡したい」「本の力を借りて、言葉の力を借りて、私たち自身が元気でいれば、誰かの涙を乾かすことができる」。東北沿岸部の書店員らの声を記録した「復興の書店」(小学館)は、本への熱い思いを伝えてくれる。

▼広さは10坪ほどだろうか。先週、福島県南相馬市のJR常磐線・小高駅近くに小さな書店が開業した。店主は、芥川賞作家の柳美里さん。エプロン姿で接客していた。3年前、神奈川県から同市に移住。本を通じて、人と人がつながる場所になれば。そんな願いで自宅を改修し、店を開いた。なんてすてきな贈り物だろう。

▼真新しい書棚には、柳さんが信を置く中村文則さん、和合亮一さんなど24人の作家、詩人が推奨する作品が並ぶ。当代屈指の目利きが精選した本のセレクトショップだ。週末には著名作家らを招き、自作の朗読会などを開く。当地は原発事故の影響で、住民の帰還は道半ばだ。本屋のある日常は、再起の一助となるはずだ。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]