2018年4月25日(水)

武力行使でシリアの混迷は解決できない

社説
2018/4/15付
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 米国が英国、フランスと、シリアのアサド政権に対する軍事攻撃に踏み切った。アサド政権が化学兵器を使用したことへの対抗措置だという。

 自らの国民に非人道的な兵器を使ったのだとすれば断じて許されない。政権の後ろ盾であるロシアの責任も重い。ただし、懲罰的な武力行使はシリアの混迷を一層深めるだけだ。8年目に入った内戦を終わらせる和平の道筋をあわせて描かねばならない。

 アサド政権軍は首都ダマスカス近郊にある反体制派の拠点地区に、有毒ガスが入った爆弾を投下した疑いが持たれている。

 トランプ米大統領は「怪物の犯罪だ」と述べて化学兵器の使用を断定した。英仏も攻撃に加わり、化学兵器関連施設を巡航ミサイルなどで破壊したという。

 アサド政権は2013年に化学兵器の拠点を全廃すると約束したが、その後も繰り返し使用疑惑が浮上している。国際社会を欺き、温存して使い続けているなら悪質だ。徹底した調査が求められる。そのために国際社会が圧力をかけることも必要だ。

 攻撃を命じたトランプ大統領には化学兵器を使わせない強い姿勢を示し、国内の支持者に決断力を訴える狙いもあったのだろう。

 だが、大統領は別の場面でシリアからの米軍の早期撤収にも言及している。シリアの安定でなく、国内世論を意識した場当たり的な対応が、混乱を拡大させていると言わざるを得ない。

 武力行使が核合意の継続をめぐり対立するイランや、対話を探る北朝鮮への影響も見極めたうえでの決断なのか疑問が残る。

 米英仏の武力行使はアサド政権への威嚇にはなっても、支配地奪還を進める政権の優位が揺らぐことはないだろう。だが、ロシアは今回の攻撃を強く批判している。

 外交官の相互追放など、急速に関係が冷え込む米欧とロシアの亀裂がさらに広がれば、緊張は一段と高まることになりかねない。

 シリア内戦がここまで長引いたのは、米ロなど内戦の当事者の背後にいる大国の対立のために、国際社会が仲介役としての機能を果たせなかったためであることを忘れてはならない。

 中東情勢の緊迫で原油相場は上昇し、旅客機が飛行ルートの変更を余儀なくされるなど経済にも影響が出ている。重要なのは内戦の悲劇をどう終わらせるかである。

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