2018年5月23日(水)

新人時代、理不尽も糧
SmartTimes (柴田励司氏)

コラム(ビジネス)
2018/4/13付
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 今から33年前のことになる。私はホテルマンの卵として新宿のあるホテルで社会人のスタートを迎えた。極めて複雑な心境だったことを覚えている。とある企業でやりたかった仕事に就くはずだったが、突然その企業の「大人の事情」で内定が消えた。失意の中、「なんでもやりますので採ってください」と頭を下げて入社させてもらったのがこのホテルだった。

1985年上智大文卒。マーサ-ジャパン社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブの最高執行責任者(COO)などを経て、2010年インディゴブルー社長、15年から会長。

1985年上智大文卒。マーサ-ジャパン社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブの最高執行責任者(COO)などを経て、2010年インディゴブルー社長、15年から会長。

 ホテルマンを志望していたわけではなかったので、ホテルのことは何もわからない。本配属は宴会サービス。ホテルの宴会場を利用した正餐、パーティー、結婚披露宴、会議などのサービスを担当する仕事に就いた。宴会場の利用時間に合わせたシフトのため、毎日出勤時刻が変わる。残業が月100時間もざらだった。

 私服で通勤し、ロッカーでユニフォームに着替え十数時間の勤務。仕事帰りには新宿の横丁でお疲れさまの会。大学時代の仲間が大手商社や広告代理店などに入社し、スーツ姿でさっそうと仕事をしている姿を横目に「このままでいいのか」と自問することもあったが、サービスの仕事は楽しく性に合った。長時間労働のため、疲れはしたが、疲弊はせず、それなりに充実した毎日だった。

 当時3年上の先輩から言われたことを今でも思い出す。「なんでもできると思っているかもしれないけど、なんにもできてないからね」。深夜に仕事を終え、翌朝の朝食のサービスに備えて、担当者全員で宴会場に布団を敷いて寝たときに言われた言葉だ。

 その通り。何もできていなかった。特に、サービスマンとしての基本動作の「持ち回り」ができなかった。大きなプラッターに盛り付けてある10人分の料理を一人ひとりのお皿にサーバースプーンとフォークで盛り付けていく作業だ。うまくできず、悔しかったのでサーバースプーンとフォークを自宅に持ち帰り、マッチをつまむ特訓をした。

 理不尽な目にも遭った。社員食堂に昼食を食べに行こうと思ったが上司がいない。ランチのサービスが始める前に済ませてしまわないと食べるチャンスを逸する。しょうがないので自分の判断で食堂に行き5分で帰ってきたところ、「勝手に職場を離れた」として一日中ネチネチ叱られた。

 社会人のスタートにこうした経験ができたのは本当に良かった。最初にそういう経験がないと必死に仕事をする、という感覚がわからない。自分の理解を超える理不尽な経験も実になった。耐性がないと物事を進めることができない。

 4月も中旬になり、入社した会社を間違えたと思い悩む新社会人のみなさんへ。思い悩む暇があったら、四の五の言わずに必死にやってみよう。今やっていることを自分の糧にできるかどうかは自分次第だ。とりあえず1年。簡単にあきらめるのはやめよう。

[日経産業新聞2018年4月13日付]

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