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「移動のサービス化」業界越えて 快適・定額制で生活一変

奔流eビジネス (D4DR社長 藤元健太郎氏)

MaaS(Mobility as a Service)という考え方が注目されている。普及が進むシェアリングエコノミーの中でも移動手段に関するものは車や自転車のシェアサービスや相乗りサービスなどの普及が急速であること、さらに車の自動運転やパーソナルモビリティビークルなどの技術進化も急速であることから、今後大きく進化が予想されている「都市における移動」をサービスとして全体最適化しようという考え方である。

中国のモバイクなど自転車のシェアリングサービスが日本でも増えている(札幌市)

2016年からフィンランドのヘルシンキでスタートした「Whim」という先行的サービスが世界中から注目されている。「Whim」はスマートフォン(スマホ)アプリから自分が行きたい目的地を入力すると自動的に鉄道やバス、カーシェア、レンタル自転車の中から最適な組み合わせを提案してくれる。無料サービスの場合はそのまま利用に応じて各移動手段で運賃を支払うのだが、月額499ユーロ支払うと全ての移動手段が乗り放題になる(タクシーは5キロメートル以内)。

複数の交通サービスが連携することは大きなメリットがある。例えば中国ではシェアリング自転車が増えたことで今まで自動車通勤していた人がシェア自転車と地下鉄などを組み合わせた通勤に切り替える動きが増えたという話がある。

シェア自転車がスマホだけで手軽に利用でき、乗り捨てが簡単になったことで実現したのだ。さらに車通勤よりも渋滞も無く駐車場も借りなくてよく、利用者にとってトータルコストも安いというメリットもある。健康にも良いし、二酸化炭素(CO2)排出の削減につながる。まさに全体最適が実現されている例だと言えるだろう。

法人の荷物運送や買い物代行サービスなども組み合わせれば、物流効率とコストの削減効果も期待できるため。都市インフラとしてのメリットはさらに大きくなる。

ただ、日本においてはMaaSを地方都市と都会で分けて考える必要があるだろう。地方都市では自家用車無しで生活できないという現状がある。急速に進む人口減と高齢化を受けてコンパクトシティーの取り組みが進むなか、高齢者の通院や買い物手段の交通インフラを効率的に維持する方法論としてMaaSが重要となる。すでにバスで業務用の荷物を運ぶことを規制緩和している都市も出てきている。

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

一方で都会では自家用車を前提にしない移動モデルも十分考えることができるだろう。しかし既存の交通機関が多様かつ複雑で簡単に進む話ではないかもしれない。今後グローバルの都市間競争の中で働く場所として、住む場所として、観光する場所として魅力的で競争力のある都市にするための必須条件のひとつがこのMaaSであるだろう。

インターネットが広帯域になり定額制になったことでネットを利用した巨大な産業が生まれ、社会システムが大きく変わったことを考えれば、移動が快適になりかつ定額制になることで新しい都市のライフスタイルやビジネスが多数生まれることが期待される。これからは都市行政や自動車、鉄道、バス・タクシーなど業界の枠を越えて「移動のサービス化」という大波に向けての創造的破壊が求められる。

それは新聞や書籍、映像業界などで予想されていたデジタル化のインパクトと同じくらい確実に来る未来なのだろう。

[日経MJ2018年4月13日付]

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