2018年8月16日(木)

ゲノム医療の効果を最大限に

2018/4/10 23:57
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 がん患者一人ひとりの遺伝情報をもとに最適な薬を選ぶ「がんゲノム医療」が、厚生労働省の指定する111の病院で始まる。副作用を減らし、治療効果を高められると期待される。技術的な改良などによりコストを抑え、無理なく根付かせる工夫が必要だ。

 従来の治療は「肺がん」「肝臓がん」など、がんの種類ごとに薬を決める場合が多かった。がんゲノム医療は患者のがん関連遺伝子の異常を探し、もっともよく効く薬を選ぶ画期的手法だ。

 ただ、課題も多い。判明した異常が必ずしもがんの主因とは限らず、検査で最適な薬がみつかるのは現状では1~2割にとどまる。検査データの分析研究を通して、この比率を上げてほしい。

 遺伝子の異常をいくつも検出しながら、治療薬がないケースも予想される。病院は患者に事実をしっかり説明し、心のケアができる態勢を整えなければならない。

 検査費用が高いのも問題だ。当面、患者の自己負担額は50万円前後となる。来年度以降、順次保険適用になる見通しだ。

 日本では年間約100万人が、がんになる。その2~3割が抗がん剤治療を受ける。そのすべてを検査すると保険財政を圧迫しかねない。厚労省は費用対効果が最大になるよう、保険対象を慎重に検討すべきだ。

 安価で高精度な検査技術の開発・利用にも力を入れるべきだ。米欧では10万円以下でゲノムを網羅的に調べられる装置が広がりつつある。改善すべき点もあるが、早期の導入が望ましい。

 将来、ゲノムの検査は健康診断に組み込まれ、どこでも当たり前に受けられるようになるだろう。長期的にはがんの早期発見・治療に役立ち、医療費の削減につながる可能性もある。

 検査結果、症状、薬の効果などのデータは個人情報保護に配慮しつつ可能な限り産学で共有し、新薬の開発などに生かしてほしい。国民が広く恩恵を受けられる仕組みをつくることが大切だ。

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