春秋

2018/4/10 1:13
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おととい日曜日の朝、東京の浅草近くの隅田川沿いを歩いた。散り急ぎ、すっかり葉桜となってしまった並木道だが、その下でも宴会の支度にいそしむ何組かがいる。かたわらに歌碑が立っていた。刻まれている文字は「春のうららの」ではじまる歌「花」の詞である。

▼作曲は「荒城の月」などで有名な滝廉太郎。1903年に23歳で没した。作詞の武島羽衣は滝の7歳上である。その後、10年から61年まで半世紀余も日本女子大で教え、94歳の天寿を全うしている。「ながめを何にたとふべき」との若き感慨が昭和へと歌い継がれるさまを目にした。人生100年時代の先達と言えようか。

▼アベノミクスがはじまった2012年から16年まで日本の雇用は168万人増えた、との記事が本紙にあった。65歳以上の比率が高いらしい。余生というには長い間、生きがいを求め、社会に居場所を探す人が多いのだろう。ただ、活躍の場は人手がいる介護やサービスの分野に傾きがちで、給与も抑えられ気味だという。

▼記事では働く側のスキル向上が重要と指摘していた。日々の暮らしでも家族、友人に先立たれ孤独に苦しむ局面が出てこよう。100年時代には様々な心構えが必要と思える。歌「花」の輝きは今もあせず「芸術は長く人生は短し」の格言通りなのだが「芸術は長く人生も長し」もまた真理になりつつあるのかもしれない。

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