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春秋

したたるような色でケヤキの若葉が茂りだした。ほころんだ白のハナミズキをかすめて、渡ってきたばかりのツバメが飛んでいく。いまは二十四節気の清明のさなかである。すべての物がすがすがしく清らかで命の息吹にあふれる。そんな中、大阪府門真市へ向かった。

▼パナソニックミュージアムを訪ねるためだ。創業者の足跡をたどる松下幸之助歴史館、ものづくりイズム館などからなり、とりわけ後者の展示に圧倒される。収蔵庫のガラス越しに半世紀前、実家にあったテレビと再会し、涙が出そうになった。館の奥、長さ16メートルの画面に映し出されるのは製品と暮らしの歴史の大絵巻だ。

▼しかし、見終えて、どこか寂しい。この次はいったい何が来るのだろうか? そんな思いがこみ上げてくる。洗濯機に冷蔵庫、ビデオデッキ……。新芽がもえ出て、やがてむせかえる緑の時期を迎えるように、経済の歩みとともに生活を彩ってきた家電群である。それを前にするにつけ、先が見通せないことへ心配が募る。

▼国は少子高齢化の曲がり角、会社も「家電の延長に安泰なし」と車載機器などに商機をさぐる。「企業は社会の公器」が信念の創業者はこうも言った。「良品は自ら声を放たず、これを求めた人々によって広く社会に伝えられる」。ものづくりイズムは不安を抱える人のニーズに寄り添えるか。産業界全体の課題であろう。

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