2018年8月14日(火)

ウーバーの自動運転事故 命関わる領域 日本に強み
奔流eビジネス (アジャイルメディア・ネットワーク取締役 徳力基彦氏)

コラム(ビジネス)
2018/4/6付
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 3月、米国でライドシェア大手の米ウーバーテクノロジーズが実証実験中だった自動運転車が、歩行者の女性をはねるという死亡事故が起きた。事故が発生した状況や、自動運転車の技術的な環境については、専門家によって見方が異なっており、まだはっきりしない要素が多い。ただ、世界的に一気に進み始めていた自動運転開発競争に、大きな一石を投じることになったのは間違いないだろう。

 事故を起こしたウーバーが試験を停止するのは当然だが、自動運転開発のライバル企業であるトヨタや米エヌビディアも相次いで自動運転車の公道試験の休止を発表しており、業界全体に非常に大きな影響を与える結果となっている。

 個人的にこの事故のニュースを聞いて思いだしたのは、昨年4月に経営共創基盤の冨山和彦氏が講演で話していた予言だ。

 冨山氏は、従来のシリコンバレーが圧勝しているいわゆるウェブの領域を「カジュアルテック」、現在注目されている自動運転や住宅、医療のような人命に関わる領域で人工知能(AI)技術を組み合わせていく分野を「シリアステック」と分類していた。自動運転もシリアステックに位置付けられるだろう。

 カジュアルテックの世界では、まずは市場にリリースして市場の反応を見ながら改善していくというスピード感が重視される。

 一方でシリアステックの世界ではその軽いノリで自動運転に取り組めば、人命に関わる事故が起こって一発アウトになるはずだ、と予言していたのだ。

 今回のウーバーの事故が、事故状況として特殊なものではなく、当然対応すべくことを全て行っていたら避けられた事故ということであれば、冨山氏の予言がまさに現実のものになったことになる。

 冨山氏の予言で興味深いのは、カジュアルテックの分野でシリコンバレーの企業に完敗した日本企業も、シリアステックの分野ではアドバンテージがあると提言している点だ。

 もちろん、日本企業もゆっくり開発をしていればよいという話ではない。慎重に慎重を期しつつもスピード感を持って技術開発や実証実験を実施していくことができれば、シリアステックの分野では日本企業がリードする分野が増えてくるはずと言えるのだ。

 ここで日本企業にとってポイントとなるのが、冨山氏が融合ハイブリッドと表現していたシリアステックにおける慎重に慎重を期す姿勢と、カジュアルテックのスピード感を融合することができるかどうかだろう。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

 シリアステックの分野でノウハウを持っているはずの従来型の企業の多くが陥りがちなのが、自社で全ての技術を開発しようとすることによって開発のスピード感が遅くなったり、業界標準から乖離したサービスを開発してしまったりというパターンだ。

 そこをいかに最先端の技術を持つ企業と提携しながらスピード感を持って取り組めるかがポイントになるだろう。

 NTTドコモや独SAPの日本法人などと提携して「ランドログ」という新プラットフォーム構想を発表したコマツや、今年に入って米アマゾン・ドットコムやウーバーなどと提携する形でのeパレット構想を発表したトヨタのケースは、そういった成功事例になりそうな取り組みと言えるだろう。

 両社に続くような取り組みを、どれだけ増やしていけるかが、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」産業における日本企業の存在感の浮沈を握っていると言えるのかもしれない。

[日経MJ2018年4月6日付]

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