春秋

2018/3/31 1:20
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朝鮮半島への侵攻がうまく行かぬうっぷんを豪勢なうたげで紛らしたか。豊臣秀吉が死の5カ月ほど前に催した「醍醐(だいご)の花見」である。京都は醍醐寺の境内に700本もの桜を植え、諸大名に凝った建物を用意させた。女房衆1300人には2度の着替えも命じている。

▼たたき上げで天下をとった武将は大いに満足したことだろう。しかし、その後の一族の運命を知る私たちには、栄枯盛衰の見本のようであり、寂しく映る。おととい午後、東京の上野公園に赴き、無数の花びらが風に舞うさまを眺めた。英傑ならぬ身ゆえ、気取らず花と向き合える幸せを多くの人と共有できたわけである。

▼日の高いうちからビールや酎ハイの缶を傾ける大学生らの傍らに、場所取りを任されスマホに見入るスーツの背中がある。ドラム缶大のテーブルが並んだ一角は、立って花と酒を楽しむ場らしい。満杯だった。「ご利用は1時間程度で」と注意書きがある。大人数で長時間すわり込む従来型を敬遠する向きにはぴったりだ。

▼最近では室内で花の映像を見る「エア花見」も盛んらしい。花粉症の人らに歓迎されているという。春の農作業に先立ち、大勢で山に入り1日を暮らしたのが花見のルーツと聞く。豊作をもたらす山の神への信仰らしい。ならわしは形を様々に変え、現代にも受け継がれているようである。上野公園、週末は花吹雪だろう。

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