2019年1月23日(水)

海外企業買収 成功の極意
SmartTimes (スティーブン・ブライスタイン氏)

コラム(ビジネス)
2018/4/2付
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日本企業が海外企業買収によって得られる投資利益率はたいてい小さく、ときには悲惨な数字になる。

米国ボストン市生まれ。戦略コンサルティング会社、レランサ(東京・千代田)の社長。国際経営学修士(MBA)とコンピューターサイエンス博士号を取得。

米国ボストン市生まれ。戦略コンサルティング会社、レランサ(東京・千代田)の社長。国際経営学修士(MBA)とコンピューターサイエンス博士号を取得。

悲惨な例として有名なものには、東芝による米ウエスチングハウス、日本郵政による豪トール・ホールディングス、キリンホールディングスによるブラジルのビール会社スキンカリオールの買収などがある。

企業文化の統合がうまくいかなかったことを失敗の原因にあげる人がいるが、筆者は多くの場合、本当の原因はそこにはないと考える。実は統合が成功してしまったことが、うまくいかない理由になっていることの方が多いのだ。優れた企業文化が劣っている企業文化に飲み込まれてしまったためとも言い換えられる。

東京本社の必要性のない官僚制度は、海外子会社のリーダーたちをイライラさせ、彼らの敏しょう性を損ねてしまう。彼らは東京本社による不透明な決定が下され、給料は下げられ、過度な残業を求められるようになったことを嘆く。こうなってしまうと、もはや高い投資利益率を期待することができなくなる。

だが、東京にいる経営幹部たちはこうした心配を耳にしても、何の行動も起こさないことが多い。彼らの大半は英語を話せないし、海外勤務を経験した人もほとんどいないからだ。そうした環境では「子会社の方が親会社のやり方に合わせるべきだ」という考え方が支配的になっている。

しかし、利益率を高めようとするならば、逆の考え方に立つべきなのではないか。海外企業買収に成功している企業のトップはこう話していた。「もっとも大変なことは、買収企業を自社のグローバルビジネスに統合するときに、その企業の成功の要因となっていた能力を壊さないことだ」

日本企業が海外企業を傘下に収める最大の理由は、海外市場で成長することにある。それは、東京本社のやり方でうまくいっていた日本市場が縮小しているということを意味する。

ファーストリテイリングの最高経営責任者の柳井正氏は、自社の企業文化を基盤としつつ、買収した企業に素晴らしい企業文化をつくりあげるという意図を明確にしていた。自社を成長させるためには、自ら学び、変革をいとわない気持ちを持つことが必要だ。それは海外企業買収を成功させることにも通じる。

成長を遂げるためにまず大事なことは、リーダーが自社につくりあげる企業文化であり、買収先企業の安定性ではない。

成功はまずビジネスリーダーの指針から始まる。それができないのであれば、いくら海外企業買収が紙の上では魅力的なものに見えたとしても、投資による効果は思ったほどの水準にはならないだろう。

そして、もっともひどい場合には、金の卵を産むガチョウを殺してしまう、という結果を導いてしまうのだ。

[日経産業新聞2018年4月2日付]

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