2019年1月22日(火)

長崎で見た観光の可能性
SmartTimes (久米信行氏)

コラム(ビジネス)
2018/3/26付
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「観光業が自動車産業を追い越す」

世界貿易機関(WTO)元事務局長のパスカル・ラミー氏が2015年秋の講演でこう語ったとき、私は大げさすぎると思った。だが、訪日外国人の急増ぶりをみれば、日本がラミー氏の母国のフランス並みの観光大国になるのも夢ではないと感じる。

1963年東京都墨田区生まれ。国産Tシャツメーカー久米繊維工業の三代目会長。明治大学商学部「ベンチャービジネス論」講師、多摩大学経営情報学部「SNS論」客員教授

1963年東京都墨田区生まれ。国産Tシャツメーカー久米繊維工業の三代目会長。明治大学商学部「ベンチャービジネス論」講師、多摩大学経営情報学部「SNS論」客員教授

先日、第1回長崎観光ビジネスプランコンテストの審査員を務めるべく、長崎市を訪れた。

グラバー園に立って港を見下ろすと、巨大な超豪華客船が目に飛び込む。聞けば毎日のように大型客船が入港するらしい。廃虚マニアでもある私は、念願の軍艦島ツアーに参加した。驚くことにどの会社の船も満席で、乗船客の半分近くは外国人であった。

長崎観光ビジコンは、そんな絶好のタイミングで開催された。しかも斬新で意欲的な試みなのである。

観光都市として順調に歩んでいるにもかかわらず、さらに観光を伸ばそうという意欲が素晴らしい。応募者を県内に限定せず「よそ者、若者、ばか者」の発想を生かそうとするオープンな枠組みも評価できる。

応募の門戸を広げるために学生部門を設け、思いつきでも構わないと呼びかけている。生煮えのアイデアには、主催者がサポートデスクをつくり、無償で応募プランづくりや事業計画の立案を支援している。

受賞後は審査員をもサポーターにして事業化を応援する。しかもその顔ぶれがすごい。ハウステンボスを再生した沢田秀雄氏を筆頭に、航空会社のソラシドエアの高橋宏輔社長やホテル運営会社のホロニックの長田一郎社長など、観光業界の第一線で活躍するリーダーたちがそろっていた。

審査は困難を極めた。プレゼンテーションの内容は百花繚乱(りょうらん)で目移りする。悩ましいのはアイデアの面白さと事業計画としての完成度が必ずしも両立していないことだ。それでもグランプリはほぼ満場一致で決まった。

神奈川県から参加した秋山智洋さんが発表した新サービス「TRIPLUS(トリプラス)」は観光のあり方を抜本的に変える可能性を秘めている。地域住民が自らの知識や経験を生かした「小さな地元旅」をインターネットで世界に提示する。気に入った人はネットで直接申し込む。観光版シェアリングエコノミーと言えるかもしれない。

農家であれば農産物の料理法を教えればいい。製造業の経営者であれば工場見学とものづくり体験のワークショップをしてもいい。私なら地元の人しか知らない路地裏のレストランを案内したい。しかも、小さな地元旅は、マニアックであるがゆえに高い客単価を得られる可能性がある。

この枠組みを使ってシニアや女性、若者が起業すれば、長崎は観光だけでなく、起業の先進地域にもなるだろう。

[日経産業新聞2018年3月26日付]

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