2018年4月23日(月)

年金支給漏れに潜む高齢社会の落とし穴

2018/3/19付
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 全国の年金受給者のうち約130万人に対し、日本年金機構が2月分の年金を本来の支給額より少なく払っていた。所得控除をしなかったためだ。あってはならぬことである。年金機構と国税庁が連係を密にし万全の手立てをとる必要があるのは言うまでもない。

 より大切なのは、高齢者の増加を前提にした手続きやサービスの仕組みづくりだ。公的機関にかぎらず銀行や証券会社を含めて高齢者との取引について予期せぬ間違いを防ぐ工夫を急いでほしい。

 年金の支給漏れは税法改正に伴い年金機構が扶養親族等申告書の様式を変えたのがきっかけだ。従来は受給者が往復はがきを送り返せばよかったが、配偶者控除の制度変更などで年金機構が昨年夏に送った用紙は記入項目が増えた。

 受け取った人からは、記入法がわからないという問い合わせが相次いでいた。期限までに返送しない人が続出し、結果として一部の支給漏れにつながった。

 機構は支給漏れになった人にインターネットなどを通じ申告書の提出を呼びかけている。確認した人から、次の支給時に被害を回復させる。また次年度は今回の申告書のコピーを送り、変更の有無を確認してもらうやり方に変える。

 年金や税に関する書類の様式に正確性を期すのは当然だ。法令の制約から内容が複雑になりがちなこともわかる。それでも、わかりやすい様式と簡便な記入法を追求するのがこれからの執行機関の使命ではないか。

 今後とくに増えるのは80~90代の高齢者だ。書類の文字を大きくする。専門用語に注釈をつける。スマートフォンやパソコンを活用し使いやすい方法を工夫する。早急な取り組みが欠かせない。

 根本的には、年金・税の制度そのものをシンプルに改革するのが課題になる。控除の仕組みをより複雑にするなど実際の運用を深く考えない制度変更は、間違いを誘発する遠因になる。

 年金と税とで執行機関が分立していることが事態を複雑にしている面もある。年金機構と国税庁の統合などの組織再編を政治の責任で提起するときである。

 民間の金融取引も同じような問題を抱えている。認知症の発症にはいたらなくとも、高齢者の判断力・理解力が衰えるのは避けがたい。超高齢時代に即した金融商品の開発と取引体制の整備に業界を挙げて取り組んでほしい。

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