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春秋

「いかに困難な人生でも、必ず達成できるものがある」「足元ではなく、星を見上げよ。好奇心を抱け」。6年前のロンドン・パラリンピックの開会式で、この人が放ったメッセージほど胸に響いたものはない。英国の宇宙物理学者、スティーブン・ホーキング博士だ。

▼天才の誉れ高く、ボート部でも活躍し、希望に満ちた学生時代を送っていたという。ところが21歳のとき、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の診断を受ける。車椅子の生活。死の恐怖。そして声を失いながら、宇宙をめぐる斬新な理論を構築して学界を驚かせていく。平昌でのパラ五輪のさなか、そんな博士の訃報が届いた。

▼「相対論と量子論の融合」などという難しい話がわからなくとも、博士のわくわくする宇宙本に魅せられた人は多いだろう。自ら地球を飛び出す計画を立て、米国で無重力体験飛行に臨んで車椅子から離れたこともある。逆境をはねのける強い意志と、それをあらわにしないユーモアとが、どれほど世界を励ましたことか。

▼病状は少しずつ進んでいたが、意思伝達システムが発信を助けていた。ロンドンのパラ五輪でも合成音声が会場に響いたものだ。人工知能(AI)によって、こうした技術はさらに進歩するのでは? との問いに、博士は「完全なAIの登場は人類の終焉(しゅうえん)につながる」と述べていた。意志の人は、深い洞察の人でもあった。

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