新出生前診断は条件整備を

2018/3/13 0:01
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妊婦の血液検査で胎児の染色体異常がわかる新出生前診断を一般診療として認める方針を、日本産科婦人科学会が決めた。診断が広がっている現状を追認した格好で、カウンセリング態勢の充実などが急務だ。

この診断法は、血液の遺伝子検査でダウン症などの原因となる3種類の染色体異常を調べる。陽性の結果が出たら、おなかに針を刺す羊水検査で確定診断する。

流産の危険を伴う羊水検査を最初からするより容易かつ安全で、米欧で普及している。とはいえ、陽性の場合に受診者が難しい判断を迫られることには目配りが必要だ。中絶を選ぶ人が増え命の選別を促す、といった批判もある。

そのため学会は、十分なカウンセリングや心身のケアができる約90の医療機関を認定し、詳細な実施計画が要る臨床研究としてのみ2013年に診断を解禁した。これまでに5万人以上が受けた。

今回、一般診療への移行に踏み切った理由を、研究の目的が達せられ新しい診断の認知度も高まったため、と学会は説明している。だがこれは説得力に欠ける。

法的な規制がないこともあり認定外のクリニックが診断に乗りだし、臨床研究は形骸化しつつあった。近所で手軽に診断を受けたいというニーズと、参入ハードルを下げてほしいという医療機関の声に押されたのが、実情だろう。

今後、診断は一段と広がる見通しだ。関係学会はカウンセラーの育成を急ぐ必要がある。日本遺伝カウンセリング学会などの「認定遺伝カウンセラー」の資格取得者は226人しかおらず、地域的偏りも大きい。

厚生労働省にも役割がある。新出生前診断の内容や精度、解釈などに関する正確な知識の普及や人材育成のための支援だ。

米欧ではすでに、体外受精による受精卵の細胞を取り出し着床前に遺伝子の異常を調べる手法も広がりだした。新技術が次々に登場する現実に、日本の医療は態勢も制度も追いついていない。

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