2018年10月23日(火)

社内起業家 育成の流儀
SmartTimes (吉井信隆氏)

コラム(ビジネス)
2018/3/12付
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「新規事業を立ち上げたいが、社内で起業家が育たない」との相談を受けるようになった。人工知能(AI)による産業革命が始動し、多くの企業で今の本業が持続可能と言えなくなった。各企業は新規事業を興そうとしているのだが、担い手となる人材が社内に見あたらないという。

1979年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。首都圏営業部長など経て95年にインキュベーション事業のインターウォーズを設立、社長に就く。日本ニュービジネス協議会連合会副会長。

1979年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。首都圏営業部長など経て95年にインキュベーション事業のインターウォーズを設立、社長に就く。日本ニュービジネス協議会連合会副会長。

私はかつてリクルート(現在のリクルートホールディングス)で新規事業立ち上げを経験し、今はインキュベーション会社を経営している。そうした経緯もあり「リクルートではなぜイントレプレナー(企業内起業家)やアントレプレナーが次々と誕生するのか」とよく聞かれる。

リクルートには「RING(リクルートイノベーショングループ=現在はNew RING―Recruit Ventures―)」と呼ばれる社内提案制度がある。

提案が承認されると提案者がチームをつくり、新規事業立ち上げに挑む。この制度により、ブライダル情報の「ゼクシィ」や飲食店情報の「ホットペッパー」など多くの事業が育ったことはよく知られている。実はRING以外にも起業家を誕生させる仕組みや要因がリクルートにはある。

その1つが「PC(プロフィットセンター・部内別会計)制度」だ。「社員皆経営者主義」を実践するために導入された。今では、この考え方が当たり前になり、制度はなくなっているが、私がいた頃は700近いPCがあった。

組織ごとの損益を明確にし、その成長と利益拡大を目的とするのがPC制度だ。会社を小さな会社(PC)に分割、PC長が経営者としての責任を負う。私も29歳でPC長に就任し、40歳でリクルートを離れるまでPCの責任を担った。

もう1つが新規事業に挑戦する社員を経営陣が奨励する風土だ。

社員が新規事業を提案したとき「何年でどのくらいもうかるのか」「大手が競合で参入してきたらどう対応するのか」などと、突っ込まれたりすることはよくある。だが、はじめから完璧な事業計画を立てられる人などいない。

リクルートでは「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という社訓が定着していた。新規事業に挑戦しようとする社員を上司や経営陣が邪魔するようなことはしなかった。中途半端で余計なアドバイスもしなかった。

起業家が育たないのは、育てようとする風土や仕組みを本気でつくっていないからだ。起業家が誕生する会社には、1人の起業家を全社をあげて応援する風土と仕組みがある。起業家が1人育つと「類が友を呼んで」起業の素養を持った人材が集まってくる。

日本企業には豊富な現預金がある。投資余力を生かし、1人でも多くの起業家を輩出することが日本企業や日本経済が成長するための道筋だと確信している。

[日経産業新聞2018年3月12日付]

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