いつまで財政刺激策に頼り続けるのか
先進国では最速で少子・高齢化が進み社会保障費用が増大する日本。国・地方の長期債務残高は1000兆円を超え国内総生産(GDP)比も187%に達する。財政健全化は待ったなしだ。
安倍晋三政権は2014年4月に消費税率を5%から8%に引き上げた後、10%への引き上げを二度先送りし19年10月とした。国と地方の基礎的財政収支(PB)を20年度に黒字化する財政健全化目標は達成断念に追い込まれた。
経済成長に伴って税収は回復しており、成長が財政健全化に貢献するのは確かだ。ただ、財政赤字の規模を考えれば成長だけでなく歳出削減や増税による対応も不可欠だ。19年の消費税率引き上げは財政健全化への重要な一歩だ。
2月下旬に開いた経済財政諮問会議では、19年の消費税率上げと20年の東京五輪の前後の経済運営が議論になった。消費税率上げ前後の駆け込み消費とその反動や、東京五輪後の需要の落ち込みにどう対応するか、という問題だ。
会議では12年にロンドン五輪を開催した英国の例も紹介され、安倍首相は「需要変動を平準化する具体策を政府一丸となって検討する必要がある」と述べた。
14年4月の消費税率引き上げの際は、増税前の駆け込み消費とその反動減で消費を中心に経済活動が大きく変動した。次の引き上げ時にはこうした変動を和らげる工夫をこらすことが必要だ。問題はその手法だ。
増税や五輪後の需要の落ち込みを歳出拡大など財政刺激策で埋めようとすれば、財政健全化に逆行する。ほかの工夫をすべきだ。
ロンドン五輪開催時の英キャメロン政権は財政緊縮路線をとっていた。五輪が閉幕した後も投資や観光客が増えたのは、財政刺激策によるものではない。
欧州などに比べて日本の消費税率上げ前後の消費変動が大きいのは、政府の指導もあって企業が一斉に増税分を価格に転嫁し値上げをするのが一因だ。もっと柔軟な仕組みを考えていいはずだ。
19年10月以降に消費者が買いたくなるような新商品を発売するなど、民間企業も消費落ち込みを防ぐ努力を求められる。
財政出動の効果は一過性だ。効果を持続させようとすれば、歳出を増やし続けなければならない。規制改革などで民間主導の投資機会を広げる改革こそ、いま最も求められている。