春秋

2018/3/8 1:11
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謎が謎を呼び、読者を決して飽きさせない――。よくできた推理小説はそのへんの設計が巧みなものである。たとえば松本清張の名作長編「球形の荒野」は唐招提寺の芳名帳に特徴のある筆跡が見つかり、後日、そのページの消失が明らかになって緊迫の度が増すのだ。

▼こちらの長編も新たな展開をみせ、世間を引きつけている。安倍首相夫人とかかわりのあった学校法人「森友学園」への国有地売却が問題になったのは昨年2月。評価額より大幅に安く払い下げられた経緯がドラマの核心だが、サイドストーリーにも事欠かない。そこへ持ってきてこんどは決裁文書の書き換え疑惑である。

▼もとの文書には安値売却の特殊性を示す言葉が記されていたのに、財務省が国会に示した文書からはそれが削られていたという。もし本当なら、事件が事件を招く清張ミステリーも顔負けではないか。ここは小説の中ではなく現実の世界だ。そこでこういう小細工に及んでいたとすれば国民と国会への挑戦というほかない。

▼「球形の荒野」では芳名帳のページ切り取りという証拠隠しが、かえって疑惑追及を強める結果となる。森友ドラマもずいぶん長くなっているから、そろそろスッキリした解決編を見せてもらいたいものだ。物語の途中でちょっと姿を見せ、あとは国税庁長官に収まって黙したままの人など全容告白の役にぴったりだろう。

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