マンション成約トップの女性営業 顧客との会話に秘訣
大京 徳本英子さん

マンション大手の大京でマンション販売を担当する課長の徳本英子さん(48)は2人の娘を育てながら成約数トップを走る敏腕営業ウーマンだ。他の社員に比べ時間の制約が大きいなか、仕事の密度を高めて時間を上手に使い、顧客のニーズを的確に把握して成約につなげる。心掛けるのは「物件を好きになることと、顧客との会話を楽しむことだ」。
中学生の2人の娘がいる徳本さんの一日は、午前5時の起床から始まる。早朝から娘たちの昼食用の弁当を作り、朝食の準備、洗濯などの家事を一気に終えて、職場のマンションギャラリー(東京・千代田)に出社するのは午前9時。本来の始業時間は午前10時だが、時短勤務にならないよう1時間早く仕事を始める。終業も1時間早い午後5時半。帰宅後も夕食の支度などの家事に追われる毎日だ。
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徳本さんは17年4~12月に25戸以上を売り、100人弱いる販売担当社員の営業成績でトップに立っている。15、16年度は既存物件の在庫を売る仕事を担当していたため順位を落としたが、その前の14年度も下期は1位。売り上げ上位社員の表彰式の常連だ。
ワークライフバランスの徹底と好調な営業成績の維持。2つを両立させる秘訣は「顧客との会話を楽しみ、楽しんでもらうことに尽きる」と言い切る。会話では相手の求める条件を丁寧に捉え、顧客の心に響く話し方を意識する。
あるマンションの販売で、100件近くの物件を見学してきたという夫婦を担当することになった。この夫婦にも娘が2人おり、高額な家を買うべきか悩んでいた。なかなか購入に踏み切れない夫婦に、徳本さんは「家を買えばお子さんが喜びますよ」と話しかけた。自身が家を購入したときも、2人の娘がとても喜んでいたからだ。
経験に裏打ちされた言葉に背中を押されたのか、夫婦はマンションを購入。後日、「本当に子供が喜んでいた」と報告してきた。「マンションは高い買い物。買うこと自体に不安を覚えている人も多く、それを払拭できる説明の仕方を心掛けている」
徳本さんは1993年に新卒で大京に入社した。当時、大京は女性社員を事務作業が中心の一般職としてしか採用していなかった。配属されたのは埼玉県大宮市(現さいたま市)にあった支店で、仕事の内容は土地買収に必要な資料作りや物件を販売する際に必要な重要事項説明書の作成だった。
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転機は96年7月に訪れた。会社の方針として女性社員を積極的に営業や企画に登用するようになり、入社以来やってみたいと思っていたマンション用地の仕入れ担当への異動がかなったのだ。「土地の魅力を調べて、マンションを建てる場所を選べるのが楽しそうだった」

しかし、土地を仕入れる仕事は簡単ではない。結果を残せないまま2年弱が過ぎ、98年3月にマンション販売の担当への異動を命じられた。「不本意だった」が、物件の魅力を説明して成約につなげる営業の現場を目の当たりにして、販売・営業に対する考えが変わった。
仕事に励むなか、2人の娘が生まれるときに合わせて約2年の出産・育児休暇を取った。職場復帰の際に上司から「営業は大変だから部署を変わらないか」と聞かれたが、営業に残る道を選んだ。
もちろん育児をしながらの営業は苦労も多い。担当する顧客との契約が夜になり、最後の仕上げを同僚に任せて帰宅したこともあった。保育園のお迎えが遅れて園長に怒られたこともある。
「時間の制約があるので、仕事の密度を高めている。同僚の支援もあって助かっている」。娘たちが中学校に通うようになってからは、仕事を途中で切り上げることも減ってきた。徐々に仕事に充てられる時間も増えてきている。ママさん課長の快進撃はまだまだ続きそうだ。
(福冨隼太郎)
1993年芝浦工大工卒、大京入社。北関東支店の総務課、業務課などを経て96年北関東都市開発一課に異動し、土地買収に携わる。98年から物件販売を担当。2度の産休・育休取得を挟んで16年4月から現職。