2018年6月26日(火)

強すぎるITビッグ5
新風シリコンバレー (フィル・キーズ氏)

コラム(ビジネス)
2018/3/6付
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 「すばらしい企業を育てるよりも、今は起業してすぐに会社を売ってしまった方が利益になる」。IT(情報技術)分野の著名コラムニストのウォルト・モスバーグ氏は、シリコンバレーで行われたスタートアップ企業向けのイベントでこのような趣旨の話をした。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

 モスバーグ氏の発言の裏には、スタートアップに投じた資金を回収する「エグジット」を巡る環境の変化もあるだろう。スタートアップがある程度の規模に育ったら株式を新規上場(IPO)させるというのが伝統的なエグジットだった。だが、この数年間は成長した後も未上場のままでいるスタートアップが増え、「ユニコーン」と呼ばれて話題になっている。

 IPOが減少している理由の例として、上場企業に課せられる規制が厳しくなっていることがあげられている。だが、それよりも根本的な理由は、IT市場の基盤(プラットフォーム)を支配する5つの大手企業、ITビッグ5の存在感があまりにも大きくなっていることにあるとモスバーグ氏は述べた。

 ITビッグ5とは、アップル、アルファベット(グーグルの持ち株会社)、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、フェイスブックの5社だ。

 今は彼らの力があまりにも強すぎて、若い企業はとても太刀打ちできそうにない。彼らの傘下に入るのは避けられない――。モスバーグ氏が言わんとしていることはおおむねこのようなことだろう。

 以前はスタートアップが大手企業から市場を奪って大きくなった。アップルやマイクロソフトはその典型的な企業だ。だが、今、設立されているスタートアップにはそのようなチャンスは訪れそうにない。

 その理由の1つは、今のスタートアップの多くは既存のプラットフォームに依存したビジネスモデルを構築していることだ。

 アマゾンのクラウド「AWS」を利用すれば、比較的容易にITビジネスを始められる。だが、それはスタートアップがアマゾンに依存してしまうことを意味する。スマートフォンを使ったビジネスを開発しても、それを多くの人に提供しようとすれば、アップルやグーグルのOS(基本ソフト)に沿ったものにしなければならない。ITビジネスを幅広く行おうとすれば、何らかの形でビッグ5のプラットフォームを使わざるを得ないというのだ。

 そして、彼らは自分たちの脅威になりそうなスタートアップを支配下に置こうとする。スタートアップがとても断れそうにないような好条件(高水準の買収額など)を提示して、スタートアップの武器である特許などの知的財産権や人材を手に入れる。だから、モスバーグ氏が言うように、起業家はある程度まで会社を育てたら売ってしまった方がよいということになる。

 スタートアップがビッグ5を倒すことは可能なのだろうか。モスバーグ氏はまだそれは可能だと信じている。それでも「以前よりはかなり難しくなった」とも言っている。

[日経産業新聞2018年3月6日付]

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