2018年4月27日(金)

裁量労働拡大をいつまで先送りするのか

2018/3/2 0:34
保存
共有
印刷
その他

 柔軟に働くための労働時間制度の改革を、後退させてはならない。仕事の進め方や時間配分を働き手自身が決められる裁量労働制の対象業務の拡大は、できるだけ早く実現すべきだ。

 安倍晋三首相は裁量労働制をめぐる不適切データ問題を受けて、働き方改革関連法案から同制度に関する部分を切り離し、今国会への提出を断念する方針を決めた。だが対象業務の拡大を先送りすればするほど、働き方改革の眼目である労働生産性の向上は進みにくくなる。柔軟に働ける制度の意義を政府は認識し直してほしい。

 国会での裁量労働制の論議が不適切な調査データの問題にばかりとらわれているのは、おかしなことだ。時代の変化に合わせた労働法制のあり方をどう考えるか、という本質的な議論にこそ力を入れるべきではないか。

 時間をかけて働くほど賃金が増える現在の制度には、働き手自身の生産性向上への意識が高まりにくいという問題がある。戦後、長く続いてきた仕組みだが、国際的にみて低い日本のホワイトカラーの生産性を上げるには制度の見直しが不可欠だ。

 グローバル競争がさらに激しくなり、人工知能(AI)が普及すれば、生産性の低いホワイトカラーは失職する恐れもあるだろう。

 社会のこうした変化に備える改革が、裁量労働拡大であり、成果をもとに賃金を払う「脱時間給」制度の創設である。裁量労働の拡大では、法人顧客への提案業務をともなう営業職などが新たに対象になる。一部の専門職などに限られている対象者が広がる。

 最初の法案が提出されてからこの4月で丸3年になる。日本の成長力の底上げを考えるなら、裁量労働制の拡大をこれ以上、先延ばしする時間は本当はない。法案に残す脱時間給制度の新設は政府が意義を十分に説く必要がある。

 今回の国会論議の混乱は首相が不備なデータをもとに裁量労働制が労働時間の短縮につながるかのような答弁したことに端を発している。政府内には裁量労働の拡大について、実態を把握し直さない限り推し進めないとの声がある。

 しかし、そもそも裁量労働制は、働く時間の短縮を目的とした制度ではない。厚生労働省の労働政策審議会はこれまで相当の時間をかけて議論してきた。国会審議の先延ばしは日本の生産性の低迷を長引かせるだけだ。

春割実施中!日経電子版が5月末まで無料!

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報