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優先すべきはイノベーション

SmartTimes (谷間真氏)

私はこれまでに7社の株式の新規上場(IPO)に成功し、17社(うち14社は非上場のスタートアップ企業)の経営に参画している。業種もICT(情報通信技術)や外食、人材、教育、不動産、医療、エネルギー、クールジャパンなど多岐にわたる。

IPOの予備軍となっている企業は約4千社あると言われている。だが、1年間にIPOできるのは、このうちの100社程度しかない。しかも、1年以内にIPOする計画で準備している企業であっても、その約70%は失敗に終わる。

失敗の原因は経営者による部分が大きい。だが、私は、IPOプロジェクトの審査にエネルギーをかけてしまうことと、審査スケジュールを重視し過ぎることにも原因があると考えている。証券会社や監査法人がプロジェクトを指導しているにもかかわらずだ。

一昔前のIPOは、成功した企業が目指すものだった。「上場企業イコール大企業」であり、IPOプロジェクトは成功した企業において内部管理体制を整えていくプロセスとなる。成功した企業の場合、スケジュールどおりに内部体制を整備すれば、IPOはかなりの確率でうまくいく。

しかし、東証マザーズなどの新興市場はスタートアップの成長手段として位置づけられている。スタートアップの成長過程では、経営者によるスピード感ある事業展開やアグレッシブな経営判断が必要とされる局面が多い。スタートアップがIPO審査に耐えうるだけの内部管理体制を構築すれば、競争力はそがれる。

証券会社や監査法人は旧来の株式公開の手法を踏襲してIPOプロジェクトを指導している。しかも、その傾向が顕著となっている。スタートアップにおけるコーポレートガバナンス(企業統治)のあり方や段階的な内部管理体制構築など、スタートアップの成長を促すという観点からIPOプロジェクトの推進方法を再構築する必要がある。

IPO審査は一般投資家に売却する株式が欠陥商品でないことを証明するために必要なプロセスだ。取扱説明書の作成や品質検査、品質保証、耐久テストと同じである。一般投資家に株式を販売しないほとんどのスタートアップにこの責務を負わせるべきではない。

スケジュールを重視した証券会社や監査法人のIPOプロジェクトに対する考え方は、ほとんどのスタートアップの成長を阻害している。IPOは自社株式をマーケティングし、実行するファイナンスだ。企業の魅力が一定水準を超えない限り、IPOは不可能だ。

イノベーションによって企業の魅力を高めることを優先し、成長度合いに合わせた内部管理体制を構築していけば、成功を阻害することはなくなる。証券会社や監査法人は経済発展の重要な鍵を握るスタートアップのイノベーションを阻害してはならない。

[日経産業新聞2018年2月28日付]

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