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ハイテク企業に大学の力

新風シリコンバレー (ロッシェル・カップ氏)

企業文化を一新したり、優位性を強化したりするため、大学の力を借りて従業員教育に努めるハイテク企業が目立ってきている。

代表例がウーバーテクノロジーズだ。スキャンダルに見舞われていたウーバーは、新スタートを切るために、ハーバード大学ビジネススクールのフランセス・フレイ教授に協力を依頼した。彼女は大学を休職し、ウーバーの戦略とリーダーシップ担当のシニア・バイス・プレジデントになった。

彼女はウーバーが抱える3つの問題点を分析した。1つ目は上級マネジャーらのチームワークの欠如だ。彼らは元最高経営責任者(CEO)のトラビス・カラニック氏と良い関係を保とうとはしていたが、彼ら同士では協力し合えていなかった。彼女は彼らの間にチームとしての一体感を形成しようと取り掛かった。

2つ目はマネジャーの管理スキルの不足だ。会社の成長が速かったので、部下を持つ経験に乏しい人が何の準備もなしに昇格することが多かった。3つ目は、従業員が自社の戦略に関して共通の理解を持っていなかったことだ。

これらの問題に対処するため、社内研修が2017年10月に行われた。その目的は(1)従業員が新しい企業文化に適応することを促す(2)社内で協力することを教える(3)従業員の知識基盤を増やす(4)肯定的な環境で働くことのうれしさを伝える――の4つだ。

企業ブランド再生に取り組んだ航空会社の事例を取り上げたプログラムには、約6千人の従業員が参加、そのうちの約2千人がコメントや感想を寄せた。フレイ教授によると、研修に参加した従業員はそこで学んだ内容を仕事に応用しているという。その効果も出始めているそうだ。ウーバーは18年も1カ月に1回のペースでこの研修を続ける。

ネットビジネスで最強の立場にいるアマゾン・ドット・コムは、自らの立ち位置をさらに強化し、これから起こり得る技術的な変化に対応しようとしている。そのために著名な学者に協力を求めている。

このほど、スタンフォード大学教育大学院のキャンダス・ティール教授が休職し、アマゾンのディレクターに就いた。彼女は学習支援の技術や学習の効率化が専門だ。アマゾンの社内教育の担当部署と協力して、職場教育のイノベーションとスケールアップにとりかかるとみられる。

アマゾンは事業拡大を続け、新しい商品やサービスを試してきた。50万人を超える数の従業員がそれについていくのは、かなり大変なはずだ。しかも、競争相手よりも技術の変化に速く備えるには、従業員のスキルのレベルが高くなければならない。

そうしたことを考えると、アマゾンが社内教育に力を注ぐのはごく自然だ。また、社内教育がアマゾンにとって有力な投資対象になる可能性もある。

日本企業は職場内訓練(OJT)を重視し、社内研修にはあまり重きを置いてこなかった。だが、従業員の教育のあり方を考えるときに、ウーバーとアマゾンの事例は参考になる。

[日経産業新聞2018年2月27日付]

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