春秋

2018/2/26 1:21
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映画「戦場のメリークリスマス」は先の戦争を背景に敵と味方の間に芽生えた友情を描く。坂本龍一さんによるテーマ曲は今も古びない。平昌五輪のフィギュアでも流れていた。捕虜収容所の軍曹ハラと捕らわれの英兵は心を通わせるが、立場は終戦で逆転してしまう。

▼戦犯となり処刑を控えたハラの房を英兵が訪ねるクライマックス。「勝利がつらく思われるときがあります」。英兵が涙で頭を下げる場面に胸がつまる。2人は戦争ゆえに出会い、そして引き裂かれた。大島渚監督は強い反戦の訴えとともに、争いのただ中でさえ魂の交わりを深める人間の姿をも強調したかったのだろう。

▼今回の五輪で感動的だった1つがスピードスケート女子500メートルで1位の小平奈緒選手と2位の韓国、李相花(イサンファ)選手が全力での滑走の後、リンクを肩寄せ回った場面だろう。トップを争うライバルだが、小平選手は「以前、つらいときに一緒に泣いてくれた」と李選手の優しさを語った。平和の祭典にふさわしい逸話である。

▼挑発が続く北朝鮮を間近にしての五輪。いっときの融和の日差しのもと、わずかな雪どけをみた。日韓のトゲともいえる慰安婦問題もしばし封印された感はある。むろん解決したわけではない。競技を通じた幸福な出会いが不幸な成り行きへ進まぬよう努力は続けねばなるまい。東京五輪がますます待ち遠しくなるように。

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