2018年10月21日(日)

勤務医の負担軽減は仕事を譲ることから

2018/2/24 23:41
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昼夜を分かたず患者に向き合う医師も働き方改革と無縁ではいられない時代だ。なかでも一部の病院勤務医の過酷な労働実態は、長年にわたって問題になってきた。

医療界の働き方改革は多様な論点を含む。産業界と同じように規制を適用するのはいささか乱暴だろう。新しく規制をつくらなくとも今の制度の枠内で勤務医の負担を軽くする方策はある。ほかの医療職への仕事の移管である。

名だたる大学病院や高度医療の拠点病院で過剰労働が表面化している。労働基準監督署から是正勧告を受けたところもあった。

夜勤明けの医師が寝ぼけ眼でメスを握るような勤務体制は願い下げだ。病院の管理者にはまず、民間企業の管理職と同様に自院の勤務医の労働実態をつかむ責務がある。ICカードなどで在院時間の記録を残すのは当然だ。

そのうえで、必ずしも医師がする必要がない院内業務の移管を組織全体で早急に実行すべきだ。厚生労働省の検討会は(1)検査や入院の説明(2)服薬指導(3)静脈採血・静脈注射(4)診断書の代行入力――などを例示した。安全確保に十二分に注意すれば、これらは看護師が担当しても問題なかろう。

また医師の指示にもとづいて特定の診療行為を補助する看護師の養成を急ぎたい。業務移管は病院によって積極度に差がある。さほど進んでいない一部の大学病院こそが、特定研修を受けた看護師の採用をもっと増やす必要がある。

業務移管に際しては患者側の意識改革も大切だ。それぞれの医療職の役割をきちんと理解し、何でも医師に対応を求めるような態度は慎むべきである。

近年は女性の医師が増えた。それに限らず、医療職には女性が多い。短時間勤務の体制整備、出産・育児後の復帰支援などに病院経営者はもっと意を用いてほしい。

医師は患者の診察の求めを拒めないという趣旨の規定が医師法にある。いわゆる応召義務だ。医師に高い倫理が求められるのは当然だが、規定を医師個人に杓子(しゃくし)定規にあてはめるのは、時代にそぐわなくなってきた。

診療所、病院などが連係して医療に空白を生じさせない工夫がいる。それには、初期診療に責任を持つ家庭医の養成が有効だ。英国のように家庭医に「門番」の役割を持たせれば、病院への患者の殺到は和らぐ。医療界、患者側の双方に改革が求められている。

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