PRより共感 サイト「カデーニャ」の心のつかみ方
先読みウェブワールド (山田剛良氏)

2018/3/1 6:30
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「フレンチテック」「ネジコン」「動いてしゃべれるスピーカー」……。こんな言葉でピンとくる「ガジェット(デジタル小物)好き」の技術者たちからの注目度が急上昇しているサイトがある。「カデーニャ」(https://kadenya.news/)。家電ベンチャーのCerevo(セレボ、東京・文京)が2017年夏から運営する、いわゆるオウンドメディアだ。

4コマ漫画「カデーニャファクトリー」はエンジニアの「あるある」の共感を誘う

4コマ漫画「カデーニャファクトリー」はエンジニアの「あるある」の共感を誘う

「商用メディアがやらないような情報を選んで提供している」と、セールス・マーケティング・広報担当の甲斐祐樹氏。トップの岩佐琢磨氏とサイトを切り盛りする。

セレボ自体を宣伝する意欲は薄い。オウンドメディアでありがちな自社製品のアピールはほぼゼロ。家電ベンチャーだから知り得る業界の「あるある話」やエンジニアが好きそうな古い製品の開発秘話の掘り起こし、よく使われる技術の裏話などに徹している。

その象徴が人気コンテンツである連載4コマ漫画の「カデーニャファクトリー」だ。岩佐氏をほうふつさせる社長が率いる家電ベンチャーの日常を面白おかしく描く。

実は「東京トイボックス」「STEVES(スティーブズ)」などで人気の漫画家ユニット・うめ氏の助言を受けて作られている本格派だ。作者のたきりょうこ氏もうめ氏に推薦されたという。

漫画の細部にもこだわりがある。例えば社長一行が中国の深圳市へ出掛ける最近の回では、背景に「福田口岸」のビルが大きく描かれる。香港と深圳の間にある出入国検査場で「深圳に行った経験がある人なら必ず『あるある』となる建物」(岩佐氏)。そのほか中国の協力工場の内部、社内の開発部門の様子やエンジニアの服装、持ち物などにも細かくこだわっているという。

「エンジニアは細部が気になる人種。美は細部に宿るではないが、例えばはんだごての持ち方が間違っていたら『わかってないなー』となる」(甲斐氏)。そうならないよう、漫画家に現地のビルや工場内部の写真といった資料を提供したり、社内の取材を自由に許したりしているという。

家電ベンチャー振興の成功例として世界で注目されている「フレンチテック(フランス発スタートアップ)」の解説記事では在日フランス大使館に取材。旧ナムコ(現在のバンダイナムコエンターテインメント)が初代プレイステーション向けに販売した専用コントローラー「ネジコン」、ソニーの踊るスピーカー「BSP60」といった伝説的な他社製品の開発者にもインタビューする。

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から日経テクノロジー・オンライン(現・日経 xTECH)副編集長。17年10月から日経ものづくり編集長も兼任。京都府出身

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から日経テクノロジー・オンライン(現・日経 xTECH)副編集長。17年10月から日経ものづくり編集長も兼任。京都府出身

セレボを辞めてしまった技術者がその後に開発した新型照明も平然と採り上げる。「あれはスゴく読まれました(笑)」(甲斐氏)。

やりたい放題のウラには計算もある。エンジニアが興味を持つ会社になれば、採用などでも有利になる。岩佐氏は「製品の宣伝はしないし、むしろ逆効果。それよりエンジニアに『セレボって気が利いてるね、面白いことする会社だね』と思われたい」と話す。

実は甲斐氏はもともと編集者。インプレスでウェブの黎明(れいめい)期からネットメディアを立ち上げ、記者・編集者として携わっていた。セレボに入社し、外から製品やサービスを見る記者から、製品を作る側へと立場が変わり、外からでは分かりにくい、書きにくい面白い話が中には多くあると気づいた。「そんな話題ばっかり載ってるメディアがあったら面白いはず」(甲斐氏)と考え、カデーニャを企画した。

同じような感覚を以前から持っていた岩佐氏が即座に同意し、ユニークなオウンドメディアが生まれた。エンジニアによるエンジニアのためのメディア。大手メディアが「してやられた」と感じるようなコンテンツが今後も出てきそうだ。

[日経MJ2018年2月26日付]

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